第69章 嵐、再来
この おまぬけな弟子が
そっちの才能を開花させたのなら
吉原で良い所まで登り詰めそうではあるな
まぁ 私の居た所までは 届かないだろうがな…?
「ははははは、
まぁ、お前を揶揄って遊ぶのも
この辺にして置くか。
ほら、あっちを、見てみろ。あげは。
お前の愛おしい杏寿郎が、お戻りだぞ?」
「もうっ、
いい加減になさって下さい。師範。
杏寿郎は杏寿郎にありますのでっ、
愛おしいは余計にあります」
「何だ?あげは。俺は、
君の愛おしい杏寿郎ではないのか?」
そう声がすぐ近くで聞こえて
慌てて振り返ると杏寿郎が戻って来ていて
「なっ、ななっ、え、あ、杏寿郎っ、
い、いっ、今の…、お聞きになられて
おられたのでありますか?」
グイっと肩に腕を杏寿郎が回して来て
そのまま身体を杏寿郎の方へ引き寄せられると
「そして、師範殿。
申し訳ありませんが、可愛いあげはを
あまり苛めないで頂きたいのではありますが?」
「え、あっ、やっ、杏寿郎…ッ、
その呼び方は止して、今は…ッ」
かなり恥ずかしいのか
あげはは顔を赤く染めてしまって
ギュッとこちらの着物を握りしめて
顔を埋めて来るから
「成程。只の可愛いあげはじゃなくて。
どうやら、俺の可愛いあげは…の様だがな」
「きょ、杏寿郎…、およしになって下さいッ…。
あまり、私を…、ふたりして…共謀して
揶揄わないで…、頂けませんか?」
にやっと杏寿郎の言葉に師範が笑うと
にやっと同じ様に杏寿郎が口の端を上げて
やっぱり この2人はどこかしら
似てるとこの前の時に感じては居たが
私が感じて居る様な事を
どことなくにお互いに感じ取った様で
「炎柱様、お話の所失礼を致します。
お迎えの馬車がもう少々で到着いたしますが?」
「ああ、そうか、すまなかったな。春日。
なら俺も支度を整えて来るとしよう。
では、俺の可愛いあげはの師範殿。
俺は、これで失礼をさせて頂きます」