第69章 嵐、再来
ふぅーっと師範が分かってない様子の
あげはの顔を見てため息を付くと
「その顔は、憶えてないの顔だな、
あげは。お前は、どうにもこうにも、
意地を張り過ぎるからな。
平気なふりをして強がるのもいいが、
こんな時ぐらい、
素直に甘えてやれと言ったんだ」
その 師範の言葉を聞いて
前に師範に言われた言葉を思い出した
その日が目前に迫って来た今に
師範はそれを心配してここに来たんだって
私がちゃんと杏寿郎に甘えてるを気に掛けて
わざわざ山を降りて ここまで来たんだって
そう 分かってしまったから
「焦らすのもいいが、素直に甘えてやればいい」
「…ーーッ、師範…、しかしっ」
「杏寿郎に、透真への気持ちを話すのに
お前のその性格と性分が邪魔して
素直になりきれて居なんだろう?どうせな。
杏寿郎は、それが出来ない男じゃないだろう?
自分が惚れた男を、信じて甘えて信頼してやれ。
それが、いい女と言う物だろうが。
杏寿郎は何も、お前のその乳を
揉むだけじゃないだろうと、
私はお前に言いに来ただけの事だ」
要するに師範は
胸を揉ませてばかり居ないで
その胸の内を素直に
話しなさいと言いたいのだろう
それにしてもそれを言うにしても
相変わらずに 師範の言い方は含みが多すぎる
「しっ、師範が優しい~ッ。
でもっ、言い方ッ…その言い方は
何とかならないのですか?」
ふんっと師範があげはの言葉に鼻を鳴らすと
「それは、あげは。お前も
私の弟子なんてしてたんだから。
私が、そう言う物言いしか
出来ない事位は知ってるだろう?
お前も素直じゃないが、
私も素直じゃないからな。
でないと、私みたいな
可愛げのない女になるぞ?お前も」