第69章 嵐、再来
天竜として仕上げるには
ここからはちょっと遠い
本来の雫波紋突きに回転力を足す必要がある
本来の雫波紋突きの構えより
身体を捻って
足の位置を調整してあげはが構えると
頭の中で その回転を
渦潮に重ねてイメージする
鳴門の渦潮…
師範は 生粋の吉原の生まれ
身請けされて 四国に嫁いだが
その結婚生活もそう長くは続かなかった
四国で師範が過ごした時間は短かったけど
師範の鴉の名前にも
天竜の型の中にも
師範の鳴門の渦潮を思う 想いが込もっている
師範にとっては何よりも大切な場所なんだって
「弟子は、師範を越えるのが…、
一番の恩返し…ッ」
師範が口癖のようにずっと言ってた言葉
「でも、その師範が遂げられなかった
想いを継ぐのも、
弟子の役目…ではないのですか?師範」
年号が変わろうと 鬼殺隊に身を置く者の
願いはひとつなのだから
鬼の居ない世界を作りたい…と言う
平和を願う 願い
悲しみの連鎖を止めたいと言う想い
スゥウウウウッ と呼吸を整えて
自分の身体に捻りと手首の回転を加えて
雫波紋突きを繰り出す
「水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き 渦潮ッ」
幾つもの波紋の奥から
大きな潮の流れが渦を成して
突きと共に放たれて行く
天竜の形に仕上げなくても
これで十分かも知れない
本来の速さとパワーアップが出来てる…
これを小さくして渦を絡めて
龍を成すかと思ってたけど
これを形にして行けば…
霹靂波紋突きも渦潮で強化できる
パチパチパチと後ろから拍手が聞こえて
『馬鹿も馬鹿なりの努力の成果か?
雫波紋突きに目を付けたのか、いい着眼点だな。
ふむ、悪くは無いな。褒めてやろう。あげは』
ここで聞こえるはずのない声が聞こえて来て
「え?えぇっ?しっ、師範…?
なっ、なぜ…、師範がこちらに?」