第69章 嵐、再来
そう言いながらその女性の手には
先ほどあげはが置いて行った木刀があって
その柄を握って
竿に見立てる様に扱いて見せて来る
不思議な空気を纏った人だな…
立ち方 その身体の捌きは剣士のそれなのだが
その 立ち振る舞いや仕草や視線は
まるで 吉原の妓の様な 妖艶な色香を放っている
それも並みの色香じゃない
眩暈を起こしそうな程に濃密な芳香にも
それは似てる様にもあるが
『悪いが、煉獄の倅。私はちょっとやそっとでは
甘ちゃんのあげはの様には、満足はせんぞ?』
イチイチ 言葉の端々に性的な意味合いを持って
絡めて含ませて来る様な物言いをする人だな
服の上から 全身を舐め上げて来る様に
その視線が淫猥に絡みつくのを感じる
『精々、私を愉しませてくれよ?小僧』
「俺は成人しているし。
小僧と呼ばれる様な、年齢も無いんだがな…」
『何、私から見れば、お前は十分小僧で。
あの馬鹿弟子は、
私から見れば、小娘でしかあるまい?』
そう言って繰り出されて来る
流れる様な連撃は 清水の流れの如く流麗だ
冨岡のとも あげはのとも違う
一見して 流れの無い様に見えるが
その速度は豪速の激流
ー 速いッ ー
速いが 速いだけじゃない
静と動を同時に併せ持つ 剣だ
水柱だっただけの事はある
あげはの育手であると同時に
この人は…
あの最強の水柱である
三上透真を育てただけの事はある
カァンッ
ビリビリッと 木刀を受けた腕が痺れる
信じられな…い
どこにこれだけの力があるんだ?
女性のあの細い腕から
この剣は 繰り出されて居るのか?
と疑いたくなる程に
一撃一撃がずっしりと重い
ニッ…と水を纏いながら
妖艶な笑みを浮かべる姿は
水の精霊か何かなのかと思ってしまう