第69章 嵐、再来
善は急げですのでと手紙を書きに
あげはが屋敷の方へと戻ってしまって
「要するに、その部分を意識的に強化して
相手の術が体内を移動するのを阻害すればいいと。
そう、あげはは言いたいんだろうが。
彼がどれぐらいの時間、
それを維持できるか…までは
予測は出来ない…な、流石に」
ひとり中庭に残された杏寿郎は
そのあげはの言葉への返事を遅れて返した
止血をするのと同じ原理だ
自分の体内に意識を集中させて
体内に侵入している 相手の血鬼術を探って
その進行方向の自分の体内の中枢に向かう部分の
筋肉を強化し収縮させて硬化させる事で
その先への 術の侵入を防ぎながら
そのまま体内で押し戻して
体外にまで
排出させればいいと言うのが理屈なのだろう
自分でそこまで出来れば問題はないし
出来なかったとしても
血鬼止めを使うまでの時間稼ぎになる
そんな事を考えていて
ある事に気が付いた
何だ?この気配は
違和感を感じる 僅かな気配の様な…物
「誰だ?そこに、誰か居るのか…?」
恐る恐るに杏寿郎が
誰も居ない空間に声を掛けると
杏寿郎が その方向にジッと目を凝らした
そこに一人
女が立っているのが見えた
水色の長い髪の女
『何だ、つまらん。気付いておったか』
気配らしい気配までの物をを感じなかったし
音もしなかった 人間……なのか?
思わずそのあまりにも
浮世離れした雰囲気を纏う女が
人なのかと疑ってしまっていて
何よりも まず先に
地面の落ちる影を確かめてしまっていた
そこには確かに影があって
実体を伴っているのだと見て取れる
「貴方は…、何者なんだ…?」