第69章 嵐、再来
「確か、分身の媒体は水でしたよね?
でしたら、当日は池の水を抜きますか?」
そうあげはが中庭の池を見ながら言うと
「池の水は抜けても、井戸は塞げないがな?
俺の屋敷じゃなくても
隣の家にも井戸や池はあるからな。
気休めの気休め程度にもならんかも知れん」
そう杏寿郎が中庭の井戸を見ながら言った
「どの範囲の水が分身に
変えられるのかも謎ですしね。
私の耳のあの血鬼術、
あれがそれの核になるのなら。
あの時の術を維持するのに、使用していたのは。
私の体液なり血液でしょうから。
あの中に溜まって居た血液も
彼の物だけでは無かったのかも知れませんし。
それに…、
水を完全に場から経つのはのは難しいかと、
人の身体は60%が水分ですから。
彼が人体の水分もその術の機縁とするならば、
防ぎようもありませんけども」
自分の右耳に寄生していた
あの血の入ったビー玉の様な血鬼術について
長期間にわたって能力を維持をするのに
あげはの血液か何かを
養分にしていた可能性を示唆して来て
「なら、俺達は体液も
自分達で制御すればいいのか?
汗の一滴、血液の一滴一滴全てに至るまで。
だが、彼は何故君を操ろうとは
思わなかったんだろうな。
傀儡にしても意味が無いのか?
人を意のままにあの術で操れるのなら、
君を意のままに操ればいいだろうに」
「あの術が解ける時、
かなりの出血がありましたが。
恐らくは血管系に
根を張って寄生していたのでしょう。
確かに脳内にその支配を伸ばせば、
私を操る事も可能だったのかも知れませんが。
支配をするのであれば、
神経を支配する必要があるのかも?」
腕組みをしながら杏寿郎が唸り声をあげる
三上透真自身が鬼の方の
三上透真を抑圧していたのには居たが
あげはに対して使用した血鬼術の
その術を鈍らせて脳にまで至るのを阻害したのか…?
彼が彼に対して関与が出来る
その抑圧の程度も知る由も…ないか
あげはもその事を考え込んでいる様で
血鬼術の本質に憶測を立てている様だった