第9章 療養編 煉獄家にて
「歳、…幾つだ?」
「私、…ですか?13ですが…」
「日が暮れる前に降りるぞ、乗れ」
自分の背中に再びおぶさるように言うと
山を再び降り始めた
軽い その小さな体にコイツは
何を…秘めているのか?
しばらく 無言のまま歩いて
「もし、…お前が年頃になって、
誰も、相手が居なかったら…」
「私は、傷物なんですよ?傷物の娘…
もらってくれる、物好きが居ますか?」
何事ともないと言うような
気にもしてないような口調で話されると
こっちが辛くなってしまう
「俺の所に来い」
「炎柱様の…所ですか?」
「俺には、息子がいる。お前より歳は
3つ下になるが…。顔はまあ、俺に似てるが、
母親に似て心の優しい子だ」
「お気持ちはありがたいですが!
恐れ多いです…それに、ご子息には
それこそ、名家のお嬢様を
…頂くべきでは…ないかと」
「名家の嫁よりも、剣の才能がある嫁の方が
うちには都合がいいしな!まぁ、そうは
言っても、俺も…瑠火と妻と一緒になる時に、
父に猛反対された」
「え?それはなぜですか?」
「病弱は女は、
嫁に相応しくないと言われてな。
子供を産めないかもしれないと…
言われてたのもあってな」
「だが、俺は…瑠火と一緒になったのを
後悔した事はない」
「も、もしや…惚気話ですか?」
「おっさんの、独り言だ……聞き流しとけ」
そう言ってあれやこれやと
馴れ初めを話始めた
俺が話したくて話たのか
コイツの気を紛らわせたくて話したのか
俺にも わからなかったが
酒は飲めないが喉の渇きを覚えて
台所までお茶を飲みに行こうとして
槇寿郎が部屋を出て明かりのついてる
居間の隣を通り掛かると
中から声が廊下まで漏れて聞こえていた
「なんとか、2人の力になれる様に、
頑張るから」
「しかし、
君にあまり世話になってばかりも…」
あげはと杏寿郎の声か
「昔、2人のお父様にいっぱい助けて
もらったから、そのお返し!だから気に
しなくていいって」
「あ、あの…あげは様」
おずおずと千寿郎があげはの名を呼んだ
「ん?何?千寿郎君」
「もし、お嫌でなければ…
“姉上”とお呼びしてもいいですか?」