第9章 療養編 煉獄家にて
こんな所に 女の身で
ましてまだ子供なのだ
誰かと一緒になって幸せな
小さな暮らしでもすればいい
命 こそあったが
彼女の足の怪我は深かった
歩ける状態じゃなかった
気を失っていたあげはをおぶって
山を降りていると
意識が戻ったのか 背中から声がした
「あの、…炎柱様っ!自分で歩けます。その
…羽織が…汚れてしまいますので!
結構です!」
「今度は、俺の羽織の心配か?ちったぁ
自分の身を心配しろ!お前の傷は浅くない…
羽織は洗えばいい。分かったか!」
「は、はい…」
途中に見つけた 小さな社のそばにあった
大きめの岩にあげはを座らせる様に降ろした
「チビ助っ、全集中の呼吸は使えるか?
…止血する方法を教える。良く聞け」
ダラダラと出血が足の傷からは出ていて
結構な量の血を流しているのは確か
早く止血させないと 命に関わる
「…炎柱様も、お手当てを…」
全く なんなんだコイツは
自分が血だらけで大怪我してるってぇのに
自分の怪我の心配じゃなくて俺の手の
小さな傷の心配をしているのか
「死んじまった仲間の事は、気にするな」
自分だけ生き残ってしまったと
罪悪感でも感じてるのか
浮かない顔をしていた
「これが…鬼殺隊だ、仲間の死は日常だ。
それに耐えられないなら、
辞めろ。まだ間に合う」
あげはは俯いて黙ったままで何も言わない
「まだ若いんだ、幾らでも道はある…まして
女の身なんだ、…誰かの嫁にでもなって、
幸せに暮らせばいい…こんな所辞めちまえ」
まだ 俺の息子とそんなに歳も変わらない
幼い あどけない顔をした少女は
「…私は、誰かのお嫁さんには
…なれないんです」
と答えた
見目は良い方だ…愛らしい顔をしている
大人になって化粧の一つでも覚えれば
見違える程の美人になるだろうし
嫁の貰い手など
引く手あまただろうに…
自分ではない誰かの為に涙を流せるし
自分よりも人を敬う気持ちもある
外見的にも内面的にも…
なれない理由がある様には
俺には感じられなかった
「…私は、…傷物なので、
無理…なんです」
そう聞いて 言葉を失った
花街の女郎だって 水揚げの年齢は
早くても15や16だ
こんな 歳幅も行かない娘に
…そんな事を…