第68章 酔って酔われて飲まれる夜に… ※R-18
「俺がこれも飲むのがダメだと言うなら、
あげは、君が飲むしかないだろう?この残りも」
そう言ってまだ 半分残っていると言いたげにして
グラスの中身を揺らして杏寿郎が見せて来るから
「………ッ」
「飲むか」
「なりませんっ、杏寿郎。
それは…、杏寿郎には多すぎにありますので…。
杏寿郎もこのお酒の効果は
あの夜にご存じにありましょう?
杏寿郎のグラスの分もありますのにっ、
これまでお飲みになられたら…私が…ッ」
「どうにかなってしまいそう…か?
いつも以上に君を、愛おしくそれでいて
可愛らしく感じて、抱き潰してしまうかもな」
そう言ってははははと杏寿郎が
豪快に笑って見せるから
彼の言葉が冗談なのか本気なのか分からない
そう言って笑って細められていた目が開いて
こちらを見つめて来る
瞳に炎が揺らいで見えるから
じりっとその視線を感じるだけで
彼の熱の様な物を感じるし
強ちさっきの言葉も冗談でも無いのかも知れない
「私の記憶が確かにありましたら、
杏寿郎には常にそうされている様にあるのですが?
こちらが、無理だと音を上げるまで
夜毎に抱かれている様にあるのですが」
「ははは、それは仕方あるまい。
あげは、君が可愛らしいからな。
あまりにも、可愛らしいが過ぎるから、
俺も、そうせずに居られないだけの話だ。
愛おしいと思う物を、可愛らしいと
思う物を愛でて可愛がるなと
言う方が無理な話だろう?」
杏寿郎が自分の手にある
半分ほど黄色い酒があるグラスを見つめて
「それに、こんな物があろうと無かろうと。
俺が君をそうしたいと思う事には
なんら、変わりはないからな。
俺がこれを飲もうと、飲むまいと一緒だ」
そうまるで タツノオトシゴの酒を
飲んでも飲まなくても変わらないと言いたげに
杏寿郎が静かに言って来て
だったら 今 その手にある
残りのお酒を杏寿郎はどうするつもりなのかと
グラスの中の タツノオトシゴの酒の
行方が気になってしまう