第68章 酔って酔われて飲まれる夜に… ※R-18
「ああ、君が飲まないと言うんだったら。
俺が残ってる分を、全部飲んでしまう事になるが。
それでも、あげは、君はいいのか?
胡蝶が作った方もあるんだから、飲まないとな」
そうだった すっかり忘れてたけど
あの市販のタツノオトシゴ酒よりも
しのぶちゃんが色々と足した特製の方があるので
そっちを飲む事を思えば
あっちを飲むのは大したことない…と思いたい
「あっ、嫌、それはなりませんっ。杏寿郎。
私の就任祝いのハズにありますよ?あれは」
「なら、一緒に飲むだろう?あげは。
タツノオトシゴのあの酒を、飲もう。
結局、前は俺は飲まず終いだったからな」
そう杏寿郎が耳元で囁いて来て
その問い掛けにあげはがこくりと頷いた
荷物を置きに戻っただけなのに
タツノオトシゴの酒の事ばかりを話してしまって
無駄に時間を取られてしまったが
居間に入ると 夕食の支度が整っていて
ふたりでゆっくりとと言う意味なのか
既に使用人の姿も無く
整えられた膳と
2人で飲むのに酒も
冷めないようにと湯煎に掛けてある
「また賑やかに皆で食事を摂るのも良いがな、
今夜はふたりで過ごせと、皆にも気を遣わせた様だな」
「それは、私と杏寿郎が今日、
結納を済ませたからではありませんか」
屋敷の使用人達が気を遣った理由を
あげはが杏寿郎に話して来て
「そうだな、今日俺と君は
正式に結納を取り交わしたんだったな」
今までは 求婚されてそれを受けた
当人同士の口約束であっただけの
私と杏寿郎の”婚約”が
蝶屋敷と煉獄家との 約束 となった訳で
婚約に対する 証人が付いて
承認されたとも言える
結婚に関しての準備も既に早くから始めているが
現実味が急に湧いて来るのは
私だけの気のせいではない…はずだ