第9章 療養編 煉獄家にて
俺も彼女を あげはを自分の娘の様に
可愛がっていたし
あげはも俺を 自分の父親のように
慕ってくれていた
俺があげはからの手紙を
読まなくなったのは
俺が…剣士をやめてからだ
読んでいなかった手紙の中には
透真がアイツの婚約者が 死んだ事
それを受けて アイツが柱を辞める事にした事
胡蝶カナエが死んだ事
その妹のしのぶの事を案じている事
一番最後に届いた手紙の日付は
今から2年前の物だった
カサッ手紙を取り出してその文面に目を通す
俺があげはからの手紙に
目を通さなかったのは
そこに綴られているのが きっと
婚約者である透真と 結婚したとか
子供ができたとか 生まれたとか
そんな… 幸せな生活について綴られていると
決めつけていたからだ…
そうあって欲しいと
心の中で願っていたのかもしれんが
単に他人の幸せから
目を逸らせたかったから
最後に届いた手紙には
俺と初めて出会った時の事が書かれていて
俺がアイツと出会った時の頃を
思い返してみると
もう10年…も前の…事になるのか
アイツがまだ鬼殺隊に入って間も無い頃
俺はあげはを含めて
5人のまだ新人と呼ばれる
階級の低い隊士を連れて 任務に当たっていた
その5人の隊士の中でも
あげはは一番ちっこくて
あどけない顔をしていた
とにかくよく泣くやつで…泣き虫だった
一般人が鬼に怪我をさせられては 泣いて
死んでいるのを見ては 泣いて
仲間がそうなれば 尚更 泣いて
この仕事をしてたら
昨日一緒に飯を食って笑った仲間が死ぬなんて
当然の事なのだと…俺は
仲間の死に慣れ過ぎてしまっていた
でも 不思議な事にそいつは
自分が傷ついたり 大怪我を負ったり
まして命がなくなるかもしれないって時も
決して 泣いたりはしなかった…自分の事では
泣くのはいつも 人の為…そんな奴だった
鬼を斬って
山を下山する頃には
俺と泣き虫のチビの
あげはだけが残っていた
この子には才能がある
剣士の才能だ…これ程の濃い水の呼吸は…
中々に居ないだろう
だがしかし 正直 この子は剣士には
向いてないと感じたんだ
優しすぎる その優しさのせいで
命を落とすだろうと
鬼狩りには向いてないと そう思った