第2章 私は彼を知らない
「あ、でもホラ。何回か
飲みには行ったじゃない?」
「それは、アイツがいる時だろーがよ!
まぁ、いい。お前は、
柱に戻っ気あんのかァ?」
その質問は
顔を合わせる度に聞かれている
答えだって毎回同じ
答えを返しているのに
「それ、何度も…、
答えたと思うんだけど?」
今度は不死川の方が彼女の
機嫌を損ねたようだった
「柱に戻るつもりがねぇーんなら、
俺の継子になんねぇか?」
元・柱である彼女が不死川の継子になる?
不死川の言葉の意図する所が読めない
「え?何で…?ならないよ、今更」
全くもって彼女の言う通りだ
理由がない
いや あるとするのなら
それは不死川の…私情だな
ごちそうさまと
あげはは自分の分の払いをテーブルに置いて
そそくさと1人
店を後にしてしまった
詮索は不要と言いたげなように
杏寿郎と目を合わそうとしない
不死川が流し込むように
お茶を飲んでいる所に
「不死川。君は彼女に気があるのか?」
と尋ねられ
ブハッ と口に含んでいたお茶を
盛大に吹き出してしまった
色恋に
全く縁も興味も無さそうな男に
思ってもいないような事を
尋ねられて面食らう
「ゴホッ、ゴホ、変な事言いやがって、
あるよーに、見えんのかァ?」
「ああ、見える!だから、聞いた」
「気のせーだろ?考えすぎだァ」
「ないのなら、安心した!
俺の考えすぎだったな!」
「あ?どう言う意味だ?」
俺がアイツに気があるかなんか
聞いてどうするつもりなんだ?
「俺は、彼女に気があるのでな!」
と言ってはっはっはっははは!と笑った
コイツが女に興味持つなんざ
天変地異の前触れかなんかか?
そう思った 不死川であった
明日は
雨か季節外れの雪でも降っかねぇ
「ああ、そうかよ。
そいつはめでてぇな」
と興味なさそうに答えた
「いいのか?不死川。
俺は遠慮などしないぞ?」
相変わらず
どこを見ているのかわからない
杏寿郎の双眸が
真っすぐに不死川に向けられていて
「マジかよ」
と小さく不死川が漏らした