第67章 春日の決意とカナエの配慮
その真っ白な姿から
遠目からしか環を見た事が無かった春日は
白い鳩だと思い込んでいた様で
あげはの肩の上の環を
物珍しそうな様子まじまじと見ていた
実際に真っ白なアルビノの個体の鴉は
珍しいのは珍しいから
春日がそうなるのは当然の反応なのだが
馬車の中だからか鳴いて声を出さずに
ツンツンと痛くない程度に手紙を読めと環が
あげはの手をつついて催促をしてくるから
「ああ。ごめんね、環。
お手紙を読めって言ってるのね、
ちゃんとお手紙、今、読むから」
環の足に結ばれている手紙を
あげはがその手に取って
「まぁ、随分可愛らしい、和紙を
杏寿郎はお使いなのでありますね」
そう言いながら手紙を開いて
その内容にあげはが目を通して行くと
バッとその手紙を閉じてしまって
くすくすと向かい側に座って居る春日が笑うと
「あげは様の、その御反応のご様子。
炎柱様からの恋文にあられますか?」
「え、ええ。…そんな感じ…の、よう…ですッ」
「楽しみにありますね、引き振袖が」
「でも、あちらの仕立て屋さんでは、
引き振袖への仕立て直しだけでなくて。
色打掛への仕立て直しも出来たのですね」
振袖を引き振袖に出来る仕立て直しだけでなく
色打掛にも仕立て直しが出来るそうで
でも あの時に白無垢の仕立てを頼んだ時に
色打掛もあの呉服屋で頼んでいたので
そうする事も出来なかったのだが
「でも、引き振袖であれば、
その引き振袖の上から
色打掛を羽織る事もできますよ?」
「っと、言うと引き振袖を掛下にすると?
それも可能であると言う事ですか?」
そうすれば お色直しの時間を
大幅に短縮できると
そう春日があげはに対して言って来て
「あの胡蝶様のお姉様の
振袖の引き振袖でありましたら、
単体でも華やかになりましょうし。
白無垢と合わせても、
色打掛とお合わせになられましても、
より華やかでしょうから。
それに、春日も
その日を心待ちにしておりますので」