第9章 療養編 煉獄家にて
うまい うまいと凄い勢いで杏寿郎が
タルトを平らげて行くので
一切れ槇寿郎の分を
確保して新しい皿に乗せて
「これは、槇寿郎様の分…に
置いておきましょうね」
「でしたら…、
母上にもよろしいでしょうか?」
「もちろん!だったら、
私も…一緒に行ってもいい?
お母様にも、ご挨拶をさせて頂きたいし」
「はい。ご案内しますね!」
仏間にあげはを案内し
仏壇にタルトを供えると手を合わせた
手を合わせて目を閉じている
あげはの横顔を千寿郎は眺めていた
長いまつ毛のついた瞼が開いて
あげはと目が合ってしまった
「ねぇ、千寿郎君。私の事、
…怖いって思ってたりしない?」
「い、いえ、…決してそのような事…は」
「いいのいいの、ごめんね、
突然、色々と驚いたでしょ?」
「…あの、あげは様はうちに何をしに
…来られたのですか?」
あれ?おかしいな 千寿郎君には前もって
私が杏寿郎さんの自宅療養をするために
同伴する条件だって
伝えてもらってるはずなのに?
「私には、とても…兄上の付き添いのため
だけだとは思えなくて…」
「うーん、そうだなぁ。君たちのお父さんに、
喝を入れにかな?」
もう少し
包み隠したり誤魔化したりするような
気がするが
この人は嘘はつかない人の様だった
「あげは様…」
「でも、多少強引にすると思うから、
それは謝るね。あんまり遅くなると、
杏寿郎さんが気にするから戻ろうか?」
居間で1人 タルトを食べている
杏寿郎を
あまり待たせるのも良くないだろうし
ーーーー気分が悪い
酒を飲めないのが…これ程までに辛いとは
気に入らない 苛立ちを覚えるが
この苛立ちを鎮めるのにあの女の手を
借りなければならないなど…
「つまらんっ…」
ゴロンと槇寿郎が布団に横になるが
まだ寝る時間でもない眠気も起こらない
イライラするからだ
徐に立ち上がると押し入れを開けて
その奥の方に押し込んでる
普段使っていない文箱を出した
読まないままにしていた
あげはからの6通の手紙だ
返事を返してないのに…送って来てたな
元々…アイツが鬼殺隊に入ってすぐに
共に任務にあたることがあって
その事がきっかけになり文を交わす様になった