第67章 春日の決意とカナエの配慮
「おっと、どうしたんだ?環…、
筆がどうかしたのか?」
環から筆を受け取らされてしまって
杏寿郎がその筆を眺めていると
今度は 環が
手紙を書く紙が入っている箱から
一枚の和紙を咥えて取り出して来る
春日がこの可愛い和紙があったのでと
受け取らされたのはいいが
淡い色合いの その蝶の形の紙が
中に入っている和紙は
あげはにこの紙で手紙を書けと言う
春日の意思がもう凄くて
気が向いた時になと言って受け取るだけ
受け取って紙入れに入れていた物だ
ズイっと環から
差し出された紙を杏寿郎が受け取って
「成程、あげはが言う事も
理解して頷けるな。環、
確かに君は、人の言葉を話せないが。
俺にこの紙にあげは宛ての手紙を書けと、
君は俺に言いたいんだろう?違うか?
それを君があげはの所に
届けてくれると俺に言いたいんだな?」
カァーとそうだと言いたげに
環が一鳴きしたので
よしよしとその環の頭を撫でると
「まぁ、今はあげはは、
丁度春日と一緒だしな。
俺がこの紙をちゃんと使ってる所を
春日にも見せられるだろうから。
よし、ちょっと待ってくれ、環。
今、あげは宛てに手紙を書くからな」
じっと その視線を
手紙に感じて
中々に筆が進みにくい
そう言えば 前にあげはが
環は隠とのやり取りは
定型文と文字が掛かれた紙を使うと言って居たか
「時に環、もしかしてと
思って尋ねるのだが、
君は文字が読めるんじゃないのか?」
「カァー」
「そうか、やっぱりそうなんだな。
なら、ちょっと待ってくれないか。
今、別の紙を用意するからな」
「?」
何を待つのかと言いたげに
環が文机の上で
首を傾げていて
「まぁ、見て居てくれれば解る」
そう杏寿郎が環に言うと
50音を 白い和紙に書いて
その 紙を 環の前に置いた
「これを使えば、俺も環、君と話せるか?」
は・な・し・て・き・る
と嘴で文字を1つずつ 環が指して行くと
「ああ、すまない、悪かった。
濁点と半濁点がいるな、
どうだ、これでいいか?」
『゛』と『゜』を 杏寿郎がその紙に付け足すと
ま・る
と嘴で指し示して来る