第67章 春日の決意とカナエの配慮
「ですが、杏寿郎は毎度毎度ながらに、
私の口の紅をこそげ落とすように…
口づけられるでは、…ありませんかッ」
杏寿郎から
小町紅を受け取ってからと言う物
こんなやり取ばかりしている気がする
いや 気のせいじゃなくてしている
紅を引いては 彼に落とされて
それを数度繰り返して
いつも遅くなってしまうんだ
準備自体はもっと早く終わるはずなのに
杏寿郎さえ 私の紅をまともに差させてくれたら
それで済むのに
「もう!杏寿郎!
いい加減になさって下さいッ!
毎回毎回、貴方と言う人はっ!!」
「いや、その…、あげは。
君の真っ赤な唇が俺に、
そうして欲しそうに見えてしまうんだ」
とそう声を荒げてしまってから
はっと気が付いた
「杏寿郎。何度、私の紅を落としたら
気が済むのですかっ!貴方はッ。
これではいつまでも、出掛けられませんでしょう?
も、もしかしてと思ってお聞きしますが、
私を怒らせて、楽しんでおられるのでは?」
むっと顔を顰めながら
腕組みをしてあげはが
杏寿郎を睨むようにして見つめると
今度は プイっと視線を逸らされてしまって
「そんな事ばかり、なされるのであれば。
知りませんからね?私は」
「なっ、なぁ、あげはっ。
その、怒ってる…のか?俺が毎回の様に
悪ふざけをするから、怒ったのか?」
あげはのその態度に
悪ふざけをし過ぎてしまったと
杏寿郎が慌てた様子をしているので
その彼の姿を見て居ると
さっきまでの気分はもう
どこかに消え失せてしまって居て
ふぅっとあげはが小さく息を吐き出すと
「もう、杏寿郎…は、仕方ない人にありますね。
杏寿郎、特別…にありますよ?」
「あげは…、許して…くれるのか?」
スルッとあげはが杏寿郎の頬に
自分の手を添えて来て
ちゅうっと自分から唇を重ねると
杏寿郎の唇に自分の唇を押しつけながら食んで
自分の紅を杏寿郎の唇に
なすり付ける様にして口付ける