第65章 密室のヒメゴト　※R-15

「あげは…っ、好きだ
…君が、好きだ…。
他の誰でもない、君だけだ…ッ」


そんな風に言われてしまって

彼のストレート過ぎる感情に

私の中のどうしようもない感情が

加速するだけでしかないのに…ッ

求めあうままに
お互いの唇を貪る様にして口付ける

あげはスルッと彼の手が着物の上から
の胸を探って来て
着物の下のその存在を確かめる様にして

着物の上から　フニフニと揉まれてしまって

「…あげは…、こうではなくて俺の上に
跨って座っては貰えないだろうか？」

今は座っている彼の膝の上に
横向きに足を揃えて座っているのを

自分の身体に跨って欲しいとそう
訴え掛けて来るから

「し…しかし…あの…ッ、杏寿郎…」

そんな体勢で口付けたりしていたら
それこそに歯止めが無くなってしまいそうだ

「真面目な君の事だから…。御者の彼に
迷惑になるんでは無いかと、
心配しているかも知れないが。
それこそ、ゴシップが伊藤博文のそれを
新聞や雑誌で取り上げたら、それ目当ての
スキモノな客も増えたらしいからな」

それも彼等は慣れっこだと言って来るから

やっぱりさっきの心付けが

かなり多かったのって…ッ


「最初から、ここで…なさるおつもりだったとか？」

「いや、そうじゃない」


返って来たのは予想外の返答で

あげはが目を丸くさせて
キョトンとしていると


「結納の時、
君に、口付けたいのを我慢してたからな。
ふたりっきりになってしまえば、
口付けるのも我慢出来ないだろうし…。
今日は俺にとっても君のとっても
特別な日である事には違いないだろう？
そんな特別な日に、
口付けを交わすだけで留めて置けなどと。
野暮は無しだろう？あげは」

そう甘い声でこちらを杏寿郎が
口説き落とそうとして来るから

私がそれに応じるまでは
それを止めてはくれないのだろう

杏寿郎の声が耳元で聞こえて
その声に熱い吐息が混じる
その吐息が耳の中の壁をくすぐって来る