第65章 密室のヒメゴト　※R-15

そう乞う様にして口付けを強請れば

そのまま　彼に唇を重ねられて
短い触れるだけの口付けを繰り返し

「ふ…んっ、杏寿郎…ッ、好き…です。
貴方が…、ンんッ、好き…ッ」

自分の中に留める事が叶わなくなってしまった
彼への好きだと言う　愛情が
言葉として漏れ出てしまっていて

「…っ、ハァ、…。あげは、…俺もだ」

グッと言葉を紡ごうとしている
彼の唇を自分の唇で塞いでしまって居て
その声にならなかった言葉を
自分の中に取り込む様にして
彼の両頬に手を添えて自ら口付ける

よしよしと下から
杏寿郎が手を伸ばして来て
あげはを落ち着かせる様に
後頭部を撫でて来る

「何だ？君は、どうしてくれるんだ？
俺に、君が好きだと言う時間も、
俺に与えないつもりか？」

「んんっ、杏寿郎…。今は…、自分の
中の貴方への感情だけでも、
溢れ出して止められないのにッ、
貴方からの言葉も感情も、私には
頂戴する余裕がございません…のでッ」

もっと自分から　言葉にも
行動にもしたいと言う意思を

あげはが杏寿郎に対して伝えて来て

言葉に出来る分の好きも

言葉に乗せきれない分の好きも

その全てを合わせる様にして


「んっ、んっ、ふぁ、好きッ…、
杏寿郎…んっ、はぁ、貴方がッ、
もう…、どうしようもなくて…ッ…」


言葉に乗せても
口付けに変えても

尽きる事も収まる所もなくて

胸が締め付けられて　息もまともに出来ない程に

ただ　苦しい…と

自分で自分の感情が　コントロールできない


好き…ッ

彼が　杏寿郎が


好きで　好きで　仕方が無くて


もう　それ以上でも　それ以下でもなくて


自分の中には　それしか無いみたい