第65章 密室のヒメゴト ※R-15
何とも言えない様な表情で
こちらを見ながら 頷いて来た…ので
その表情を見て もしかして…と
予感にも似た物を感じてしまう
杏寿郎が御者に渡した
あの心付の意味を深読みしてしまって居て
今のお礼以上の意味がある様な
そんな気がするのは…気のせい?
まさか…ねぇ?…と
あれこれと考えてしまって居て
ドキドキと自分の心臓が騒がしい
そんな疑問を 私が抱いてしまって居るのは
今 こちらを見つめて来ている
彼の視線に熱い熱を感じるから…で
見つめられている所が熱くて
そこから溶けだしてしまいそう…にも感じる
「あげは、俺としてはそろそろ、
この馬車の窓のカーテンを
閉めたいんだが、いいだろうか?」
そう杏寿郎が声を掛けて来て
いや その馬車でなら二人っきりだから
結納の後の食事会までの間に
杏寿郎は今その場で
抱きしめたり口付けたいと言っていたので
それは後でとはこっちも言ったには言ったし?
その手前…ッ
それはお屋敷まで我慢をとは
こっちとて言い出しにくい…訳で
それにあの時彼は
馬車の中で…と言っていたので
「…閉めるぞ?」
「ま、待って下さい。杏寿郎」
私が返事を返さなかったからなのか
杏寿郎がカーテンを閉めようとしたので
その手の上に自分の手を重ねて
杏寿郎にカーテンを閉めさせるのを止めると
「よもや。あげは。
今日の君は…、随分と大胆だな?
そうする姿を、公衆の面前に
晒してしまってもいいのか?」
そう大いに別の解釈をしながら
杏寿郎がこちらに対して言って来るので
「ち、違います…ので。杏寿郎が
そうご期待してる様な、
意味ではございませんので。
少し、その…そうする前に…
杏寿郎と、お話をしたくありまして」