第65章 密室のヒメゴト ※R-15
「さっきの、思い付きの行動と言い。
案外、子供ぽい事もするんだな、君は」
「年甲斐もなく…、私が
らしからぬ行動をしていたと。
杏寿郎はご指摘されたいのであられましょう?」
「だが、あげは。
その君の年甲斐の無さに
父上も感謝されておられたしな。
それに、俺も、感謝して居るぞ?
あの、三好さんに礼を受け取って貰うのに
俺も、苦労していたからな」
「お説教なのか、お礼なのか…
それでは分かりませんよ?杏寿郎」
あげはの言葉にははははと杏寿郎が笑うと
「だが、馬車は飛び乗ったり、
身を乗り出す物ではないからな?」
むぅとあげはが正論を言われてしまって
反論も出来ずに口をと尖らせていたので
「拗ねてしまったか?」
「いいえ、別に…拗ねてはおりませんが。
杏寿郎、少しお待ち頂いても?」
さっきまでの悪戯っ子の様な
そんな顔ではなくて
落ち着いた大人の顔に
あげはがなっていて
前の馬車の御者
(ぎょしゃ:馬車の運転をする人の事)に対して
要件を伝える為にある小窓を
隠しているカーテンを開いて除けると
小窓を軽くノックして
運転手の注意を自分の方に引くと
カラッ…とその小窓を開く
「あの、すいません。御者さん。
ありがとうございました。そちらに、
お礼を申し遅れておりました。
御者さんにも機転を利かせて頂いて。
でもお陰であちらに、お礼も渡せましたし。
2人にもお礼と挨拶をする時間を頂けました。
御者さんのお陰であります。感謝しております」
そう今の行動についてのお礼を
あげはが馬車の御者にも伝えて居ると
すっと杏寿郎があげはのすぐ隣に来て
「杏寿郎?」
その小窓から
杏寿郎が自分の手を外に出すと
杏寿郎がその手で
御者に何かを握らせるから
御者にも 今の分の心付を渡したのだろうが
それまで 前を見ていた御者が
こちらをちらっとだけ
確認をする様にして 一瞥して来る