第9章 療養編 煉獄家にて
槇寿郎は机の上に置いていた
杏寿郎からの手紙を無造作に取ると
その内容に目を通す
前の方は 簡単に自分の経過について
書かれているのみで
俺への恨言が書かれているわけでは
無いようだった
読み進めて…槇寿郎が一度手紙から目を離して
顔を上げる
杏寿郎にも 一生を共に歩みたいと切に思う
相手が現れたとの事だった
…そんな日が来るのを
瑠火は…楽しみにしていた
その目で その相手の姿を見れないこと
そしてそれを祝えない事を…
病の床の中で悔やんでいた
悔み事は言わない女だったのに
もう…8年に なるのか…
時がこんなにも流れていたとは
通りで杏寿郎もそんな事を言い出すような
歳になったわけだ…
「俺も、歳を…取った…な」
杏寿郎の鎹鴉が言っていた
杏寿郎は“上弦”の鬼と戦ったのだと
前に俺が 炎柱だった頃 吉原の上弦の鬼に
2人の柱が殺された…強い…剣士だったのに
上弦の鬼の力は 柱3人分…と言われている
上弦の鬼と戦い
瀕死の重傷を負ったのにも関わらず
一命を取り留めたと聞いた
千寿郎が一緒に顔を見に行かないかと
誘いに来たが
馬鹿馬鹿しいと一喝して断ってしまった
グイッと自分の隣に置いていた
酒瓶を持って煽るとはぁーと息をついた
それから丸2日が過ぎて
あの日から4日が過ぎた時
胡蝶の許可が降りて
煉獄家で自宅療養する事となった
千寿郎には昨日鴉が手紙を届けているから
父上にもそれは伝わっているはずだ
千寿郎が襖の向こうから声を掛けて来た
「父上、今日午後に兄上が、
お戻りになるようです」
「まだ、そんなに時間が経ってないのにか?」
その様な大怪我をしたわりに戻って来るのが
早すぎると感じた
「先日のお手紙で話した、
お相手をお連れになられる様です」
随分と急だな
その話を2日ほど前に聞いた所なのに
もうその相手を連れて来るのか
酒瓶を持つと軽い もう空だったのか
ふらりと槇寿郎が寝巻きの上に
一枚羽織っただけの姿で酒を買いに出かけた
酒を買って戻ると
一台の馬車が家の前に停まっていて
千寿郎がそれを出迎えているのが見えた