第64章 結納編 午後
「アンタが私に、この先の
楽しみをくれそうだしね?
さぁ、出来たよ。
あげはちゃん。見てご覧よ?」
そう言ってあげはの両肩に手を添えて
一緒に姿見の中の
綺麗に髪を結い上げられたあげはの姿を見る
「ありがとう、三好小母さん。
彼と結婚して子供が生まれたら。
毎年、誕生日に子供と彼と来るから」
「もし、娘が産まれたらさ。
その子の髪も結わしてくれるかい?私に」
三好のその言葉にそれまで
必死にこらえて来た物が
堤防が決壊したかのように溢れ出して
ボロボロと涙が自分の目から溢れるから
「ああっ、もう、泣くんじゃないよ。
いい歳した子が恥ずかしいねぇ。
まぁ、今日は、特別だよ?
お客さんにこんな事してるって、
バレちまったら、怒られちまうからね」
そっと三好が
あげはの後頭部に手を添えて
自分の身体にあげはの頭を持たれさせると
よしよしとその手が
あげはの頭を撫でて来る
「…み、三好小母さんッ…子供
女の子…が、産まれたら連れて来る…ッから」
「ああ、楽しみにしてるよ。
と、言いたい所だがね。
髪は結えなくても、いいからさ。
男でも女でも、どっちだっていいから、
連れて来ておくれよ」
「あの、三好小母さん。いつの話になるかは
私にも、分からないけど。
その時は、抱いてあげて…貰ってもいい…?」
「もう、嫌だねぇ、アンタって子は。
私の事、泣かせるつもりかい?
…私みたいなのに
そんな事言っちまってさぁ。
何だい、バレちまってたのかい?
どこか、親戚の娘さんみたいに見て居ながら、
アンタの事をね、自分の居もしやしない
娘…みたいに、思って見てたって事…」
三好小母さんが 私の事を?
自分の娘…みたいに??
「そんな顔するんじゃないよッ、
アンタが私の娘って言うには、
ちょっとばっかし、大きすぎるしね。
冗談だよ、本気にしてくれとは言ってないよ?」
「はいはい、そんな事は
言われなくても分かってるから」
そう冗談だと 言って来るが
三好の気持ちが流れ込んで来るみたいだ