第63章 結納編 昼
「アンタも色々と苦労してるって事かい。
若いのに、実入りのいい仕事ってぇのも
これで、納得が行ったってもんさ。
幸せに…なるんだよ、あげはちゃん。
きっと、アンタのお父さんも
そう思ってくれてるさ。
ああ、勿論、私も思ってるけどもね?」
そう言ってこちらに向けて
三好がウインクをして見せて来るから
「うん、ありがとう。三好小母さん」
「アンタは自分の仕事に
もっと、自信を持っていいんだよ、
公に認められてないからなんだい。
言いたいヤツには言わせて置けばいいさ、
誰にだって出来る仕事じゃないよ?
見も知らずの誰かの為に、自分の命張ってんだ。
立派な仕事じゃないのさ」
そう三好が言って顔を上げると
周囲の視線が自分に集まっている事に気が付いて
フッと槇寿郎が口元を緩めると
「恐らくに、三好さん…とやら。
貴方の今の言葉にここに居る全員が
救われた気がしてるはずだ」
槇寿郎の言葉に 三好がハッとして
その場にいるひとりひとりの顔を
改めて確かめる様にして見て行く
「成程ね。アンタ等の顔は憶えたよ。
美味しいもんが食べたくなったら、
またおいでよ。ちょっとくらいだったら、
サービスするよ?
お嬢ちゃん達は、その柚子の
シャーベット食べ終わったら。
ラムネのシャーベット、おまけしちゃおうかね」
「ラムネ…?食べたい」
好物のラムネを使った
シャーベットがあると言う三好の言葉に
カナヲが反応を示して
「まだ、試作段階でね?夏までに
売り出せるようにするつもりの裏メニューだよ」
待ってなと三好が部屋から下がって行って
大きなトレーに女性の分の数のラムネの
シャーベットを皿に入れて運んで来て
爽やかな空色のシャーベットには
ゴロゴロとラムネの粒が見えている
「良かったですね、カナヲ」
そうしのぶがカナヲに声を掛けて来て
カナヲの分の皿のシャーベットだけ
雪だるまの様に2段になっていたから
隣に居たしのぶがカナヲに声を掛けて来て