第63章 結納編 昼
中庭にはしのぶと杏寿郎だけになる
「煉獄さんがあげはさんを
連れ出して下さって助かりました。
あげはさんが、手紙の中で
煉獄さんとのお金の感覚が合わないと
仰っていた意味が、私にも理解出来ましたので」
「胡蝶、これはだな…ッ。
俺の家からあげはの家に結納金としてだな」
「よろしいですか?煉獄さん。
私はこの結納で結納返しの品を
そちらで格式を合わせて用意して頂けると、
そちらの工藤さんからその様に
お話をお聞きしておりましたから、
そうであるならお願いしますと
そのお話に同意したんですよ?
これではお聞きしていたお話と
お話が違いませんか?」
「そっ…、それはだな…、胡蝶」
しのぶからの質問に
杏寿郎が答える時間も与えずに
しのぶが言葉を続けて来る
「まさか、お話にあった結納返しだけではなく
その中身まで用意しているとは私だって、
全く持って思っておりませんでしたので。
ですから。そのお手元の結納金は
お返し致します。お受け取りできません。
金額的にも多すぎますし?
私どもから、あげはの方には
何か持参品を持たせるつもりも
ありませんので。お金は結構です」
杏寿郎が自分の考えを言う暇も与えられずに
しのぶが自分の考えを述べて来て
きっぱりと断りをされてしまった上に
そのまま更にしのぶが言葉を続けて来る
「それに、こちらから何かを持たせるより。
煉獄さんの事ですから、ご自身の手で
あげはさんの身の回りの物を
用意して差し上げたい
お考えなのではありませんか?
こちらは、それに宛てて頂ければ結構ですので」
「あげはから、聞いたのか?」
恐らく胡蝶はあげはから
俺があげはが屋敷に来る前に
予め俺が工藤に頼んで
用意させていた家具の事を言ってるのだろうが
杏寿郎の問いにしのぶが
そうですとちいさく頷くと
「ええ。私どもがお預りしていた
あげはさんのお金を
煉獄さんにお預けしたのは、
他でもない私ですから。
私にもそれを聞く権利があると言う物です。
しかし、煉獄さん、
今の争点はこの結納金にあります。」