第63章 結納編 昼
彼が彼を止めているのは知ってる
でもその制御も完璧ではない事も
彼が鬼としての力を付ければ付けるほどに
鬼の方の彼の方が優勢になるのだろうから
「なら、どうして自分が不利益を被るのに
あの鬼は、すぐに来ない?こちらの
準備を十分すぎる程に、整えさせる?」
「何故?…説明、した方がいい?義勇。
こちらが万全に万全を期すほど。
あの透真からすれば、それを崩した時の
絶望が大きくなるから…。
手に入れるだけなら、
私の身体を食らいたいだけなら、
いつでも良かったのよ、きっとね?
でも、あの人が欲しい形は、そうじゃないって事」
普通に手元に置いて手に入れるとも
自分の欲望のままに好きにする事とも
文字通りにバリバリと食らう事とも
彼の 鬼の透真の欲しい形は違うのだ
何年にも渡って自分の邪魔をし続けていた
水柱の三上透真に対しての
最大の復讐も これは兼ねているのだろう
彼がずっとしているこの努力が
私が杏寿郎を愛する事で
無意味なのだと知らしめながら
その身体を共有してる彼等は
お互いを恨んでいても
彼は彼を殺せないから
彼は彼を殺したいのだろう
肉体的に殺すことは出来ないから
彼を絶望させて 彼の心を殺したいのだろう
透真さんを本当の意味で失って
私が杏寿郎をも失えば
私は 抜け殻の様になってしまうのだろう
「きっと、要らない物…
なんだろうね?あの人には。
自分の物にならない私の心なんて、
あっても、なくてもいいんじゃないかな?」
私の過去の愛も今の愛も未来の愛も
あの人に向ける事は無いと
「あげは。もしそうなってしまえば…」
「鬼殺隊は
壊滅させられるでしょうね?彼一人に」
透真さんが持っている鬼殺隊の内部の記憶が
あの鬼の透真に渡って
鬼舞辻無惨に知れれば
鬼殺隊は壊滅してしまうだろう