第63章 結納編 昼
「だから…どうして、君はそうなんだ?
待てなくなってしまいそうだろう?
どうにもできない状況で、
煽るのは止めてくれないか?
後で、もう止めてと言うまで…
俺にそうされる覚悟を
君は、それまでの時間にして置くといい」
そう言って杏寿郎がその場を後にして
ぽつんと一人残されてしまった
こんな素敵な結納を用意するだけ用意して
こっちを喜ばせるだけ喜ばせて
お礼を言えば煽ってると言われてしまった
「ん?煉獄は…、居ないのか?」
杏寿郎と入れ替わりに
中庭には義勇が姿を現して
そうこちらに声を掛けて来る
「義勇?杏寿郎は居ないけど
どうしたの?杏寿郎に用事だった?」
「いや、宇髄に
邪魔をするなと言われたからな。
俺は、あげは。お前に話したい事がある」
中庭に設置されているししおどしが
カコンと音を立てて
話したい事があると言いながらも
話を義勇がし始める 雰囲気が無かったので
「私が、前に話した課題はどんな感じ?」
「それか、それは
何となくにだが、形になって来ている」
義勇の言葉にあげは満足そうに頷いて
「雫波紋突きも、仕上げてくれてる?」
雫波紋突きと聞いて
しのぶから預かったあの薬を義勇は思い出した
「あげは…」
「義勇のね、聞きたい事は分かってるつもり。
あの薬を大量に投与したら、彼が元に
元の彼に戻るのかって事でしょう?
でも、義勇。彼は彼を許せないと思うの。
彼の事も、彼がした罪も。
彼は許さないだろうから」
もし 仮に
その薬を常に彼に投与し続ける事が可能で
その薬の力を持ってして
彼を元に戻すことが出来たとしても
自分が犯した 罪では無いと
そう周囲が彼を説得したとしても
彼がもうひとりの
彼の罪を止める事が出来なかった罪を
許すことが出来ない人なのは
私が一番良く知っている
三上透真と言う名の鬼が
あれほどの力を付けているのだから
相当の数の人を食らっている