第63章 結納編 昼
感極まった様子で杏寿郎に対して
あげはが素直な感謝の言葉を述べて来て
そのあげはの目に
輝く物が溜まって居るのが
杏寿郎の目に映る
「そんな顔を今、見せられても俺は
どうにもしてやれずに歯がゆいばかりだがな?
流石に、今、この場で君を抱きしめるのも、
口付けるのも君には俺は、許しては貰えまい?」
そう左側から囁きかけられてしまって
杏寿郎の声が甘く熱く鼓膜を揺らして
自分の中の彼への感情が
煽られて燃え上がる様にも感じる
「この後に、食事会さえなければ。
このまま、今の振袖姿の君を堪能したいし、
独り占めしたいとも思うが。
どうにも、今日の君は俺だけの、
あげはでは無いらしいからな。
冨岡と会うのは久しぶりだろう?
遅れて来た彼も、
君と話したい事もあるだろうし。
少し、皆と話をして来るか?」
ギュッと杏寿郎の着物を掴んで引くと
あげはが杏寿郎の注意を引いて来て
「あっ、あの…、杏寿郎の、その…後で…ッ」
「君の言いたい事は、言われるまでもなく
俺も同じ気持ちだからな、
少々いや、大いに
熱が込もり過ぎてしまうかも知れんぞ?
さぁ、あげは、行って来るといい。
でないと、君を自分の所に
留めてしまいたくなるからな」
そう 他の人とも
話して来る様にと杏寿郎に促されてしまって
身体の距離を少し離されると
「杏寿郎の紋付き袴姿も
とても、良くお似合いにあります…よ?」
「ははは…、ならば、もう一声。
あげは。君からの
お褒めの言葉を欲張りたい所だがな?」
「いつも、杏寿郎は素敵にありますが。
今日の杏寿郎はいつも以上に素敵にあります…よ?」
「ん?あげは、君の俺は素敵なだけか?」
一旦距離を離されてはずなのに
いつの間にか彼の腕に閉じ込められていて
杏寿郎の腕の檻で下半身同士を
引き寄せられてくっつけられてしまう
耳元でそう囁いて来て
素敵なだけでなくて
別の言い方をして欲しいと
杏寿郎に強請られてしまう