第63章 結納編 昼
中庭を2人で散歩をしてはと
しのぶに提案された通りに
杏寿郎とふたりで中庭を歩く
「それにしても、驚いたな」
「驚いた?何の事にありますか?杏寿郎
先ほどの終わりの挨拶の事ですか?
何の打ち合わせもなく、突然に
杏寿郎が俺達からの挨拶と仰られたので。
私の方が、驚きましたが?」
「いや、俺としては隣に居てくれたら
それで良かったんだが、まさか君が
自分から挨拶の言葉をを言ってくれるとは
予想もして無かったからな。驚いたぞ?
いや、君なら機転を利かせてくれるかもと
心のどこかで期待もあったのかもな?」
ふふふとあげはが杏寿郎の言葉を聞いて
自分の口元を押さえながら笑うと
「では、私のあの挨拶は杏寿郎の
その御期待に沿えて…居たと、
私は、解釈しても?杏寿郎」
「ああ、勿論だ。その場での挨拶とは
思えない程の、言葉だったぞ?あげは」
「杏寿郎に、
お褒めに預かり光栄にありますよ」
「春日には、予め話をしてあるから。
食事会が済んだら、その足で炎屋敷に戻って。
あげは。その今、君が着ている振袖を
引き振袖に仕立てて貰える仕立て屋に
春日と行って来るといい。
今のそのままの姿でも、その胡蝶姉の振袖は
十分すぎる程に君を
際立たせて居るには居るが。
きっと、その胡蝶の姉の振袖が
引き振袖になれば。今以上に、
君の美しさを引き立ててくれるだろうからな」
じっとこちらに向けられて居る
杏寿郎の視線の奥底にゆらりと揺らぐ
炎が見えた様な気がしてしまって
どうにもソワソワとして落ち着かないでいた
「ええ、ありがとうございます。
杏寿郎、今日は準備も何から何まで
杏寿郎にお世話になったままにありまして」
そう一旦言葉を区切ると
そのままあげはが言葉を続ける
「しのぶちゃんと、カナヲだけでなく
蝶屋敷の皆も、お呼びになって
くださって居たのですね。
結納だけでなく、
こんな素敵な贈り物まで頂いてしまって。
杏寿郎には…なんと、お礼を
私は申し上げればいいのか…」