第63章 結納編 昼
そう杏寿郎が慌てて来て乱れた呼吸をしている
義勇に水を持って来て欲しいと仲居に依頼して
それを受けた仲居が頭を下げて退室する
「すまない、本来なら…
着替えて来るべきだった…が
どうにも、間に合いそうになかった。
この様な場に、隊服のままですまない」
隊服のままでこの場に来てしまった事を
乱れた呼吸のままで義勇が謝罪をして来て
「そう、改まって硬く畏まる事も無い。
顔を上げなさい。冨岡君」
そう槇寿郎が義勇に対して言って
驚いた様子で義勇が槇寿郎の方を見つめると
余程 急いで来たのが分かる程に
いつも以上にその髪は乱れていたし
顔には土埃らしき物もついて居て
どこを通って来たのか知れないが
細さな枝や葉も引っ付けているその姿は
大凡に この場には
不釣り合いな事はこの上ないが
一番機嫌を悪くしそうな槇寿郎が
一番にそれを気にする事は無いと
義勇に対して声を掛けて来て
怒られるのならまだしも信じられないと
言いたげな表情を義勇がしている
「先代の炎柱、ありがたいお言葉に感謝する」
義勇がそう言って
槇寿郎に向けて頭を下げると
カナヲの隣に用意されていた
自分が納まるべき場所に姿勢を正して正座する
「隊服は、鬼殺隊の制服だからな。
鬼殺隊の隊服は、
鬼に立ち向かう者の正装だろう?」
槇寿郎がそう静かに言って
その言葉に宇髄がうんうんと腕組みを
しながら頷いて同意すると
「ははっ、流石は元炎柱。
煉獄のおやっさんだわ、言う事が違うし。
甘露寺、これで役者が揃ったんだ。
結納の続き、派手に行こうじゃねえか」
持っていた扇子で自分の手をパンと
宇髄が叩くと 結納を進める様に蜜璃を促して
「ええ~、コホン。それでは改めまして
結納返しと受書の取り交わし…の方を…ッ
よろしくお願いします」
しのぶが結納返しの品物を杏寿郎と
槇寿郎の方へ白木の台を返して向けると