第63章 結納編 昼
両家の間の位置に
不自然に配置された 一枚の座布団から
目が離せないでいて
考えられる事があるなら
こちらとあちらの両方に縁のある人物なら
あの位置に座れるのかと
が考えていると
あげはがある事に気がついて
ハッとすると
バタバタと廊下の向こうの方から
こちらに勢い良く走って向かって来る
騒がしい足音が聞こえて来て
「きゃあああっ!嫌だわ、遅刻だわっ!
すいませぇえええん!
始まる前にって、お手洗いに行ったら。
広すぎて迷子になって
しまってましたぁあああっ!!」
そう大音量で蜜璃に叫び声が
離れた所から近づいて聞こえて来て
凄い勢いで部屋の襖がスパァーンと
音を立てて開いて全開になると
ブッと槇寿郎が思わず
それに拭きだしてしまって
くすくすと千寿郎も
口元を押さえて笑っていたので
緊張感のあった場が蜜璃の登場で
和やかな空気に変わるのを感じる
「誰かと思えば、君か…。甘露寺君。
相変わらずの様で、安心した」
「ええ、とても、
甘露寺さんらしいですね。父上」
蜜璃が顔を真っ赤にしながら
自分の手で両頬を押さえていて
「槇寿郎様に、千寿郎君??
きゃああっ!久しぶりだわ、
お元気にされていたかしら??
はっ、私とした事が…ッ、
すっ、すすっ、
すいませんでしたぁあああぁっ!
嫌だわ、恥ずかしいわ、
騒がしくしてしまってごめんなさい」
そう言いながら何度も頭を下げて来るから
頭を下げる蜜璃を杏寿郎が止めて
「甘露寺、そう謝る必要はない。
それよりも、今日は良く来てくれたな。
それに君が居ないと、
結納が始められないだろう?
甘露寺。そんな所に立ってないで、
早く中に入って来るといい」
そう穏やかな笑みを浮かべながら
杏寿郎が蜜璃に部屋の中に入る様に
促して来てそれぞれに対して
「すいませんっ、失礼いたしますッ!!」
蜜璃が頭を下げながら
下座に置かれていた座布団の上に
ビシッと全身にガチガチに
力を入れて緊張をした面持ちで正座をした