第63章 結納編 昼
しのぶがその血鬼術に対する
対策を取るのに必要な物を
隠に依頼しているが
当日には間に合わないかも知れないと
あげはに対して伝えて来て
「しかし、それは血鬼術であるなら。
それが例えどの様な発動機序を、
持つ術であったとしたとしても。
あげはさん、貴方の鏡でなら返せるはずです。
それが…貴方の持つ、その
鏡の呼吸の特性だからです」
「うん、ありがとう。しのぶちゃん。
分かってる、その為の準備は私もしてるから」
そんな話をしている内に奥の院について
「さぁ、ついたよ。
ここがうちの奥の院の自慢の部屋だよ」
料亭の様な格式の高さを持つ
この店の離れだけの事はあって
隅々まで丁寧に清掃がされている
清潔な室内は高価な調度品が置かれていて
置かれて居る調度品だけではなくて
床の畳も最上級の物で
他の個室の畳とも違うのが見てもわかる
既に煉獄家側の飾りつけが済んでいる
床の間の方に目を向けると
床の間の隣の書院の部分にも
繊細な職人の匠の業が施された
書院欄間(しょいんらんま)が目に入って来る
5枚を全体的に使って
大きな松の木が茂り
その脇に鶴が佇んでいて
その内の一羽の鶴が
空へとダイナミックに飛び立っている様が
繊細に表現されている芸術的な書院欄間だ
「あげはさん?
書院欄間…が気になりますか?
確かにどこかのお屋敷にあってもいい
素晴らしい書院欄間ですけども。
私は原木の命を感じるような、
立派な床の間柱の方が気になってしまいます」
そうしのぶが書院欄間を見ているあげはに
自分は立派な太さのある原木の形を生かした
真っすぐではない自然の歪みを持つ
床の間柱の方を見ていて
「あげは姉さん、しのぶ姉さん。
今は、お部屋じゃなくて、こっち」
そう今は結納返しを飾り付けに来たのだと
カナヲに注意されてしまった