第63章 結納編 昼
「略式結納は会食…を含むからな…。
その会食の場所としてこの店を選んだのも
その辺りの事もあってなのか?」
「この店は、あげはが育ての父と
何度も節目節目に訪れていた、
彼女にとっての特別な店ですから」
杏寿郎の言葉を聞いて
槇寿郎は自分の記憶の引き出しの
奥の方にある記憶を探る
あげはにとって 育ての父親との
思い出の店だと言う話は
9年前に柱の就任祝いに
この店を訪れた時に
あげはの口から聞いたのを憶えて居る
そして その話と衝撃的なすき焼きの味と
そのすき焼きの味に勝るくらいに印象深い
あの三好と言う名の 仲居の事も
忘れようにも忘れられない
自分の姪か何かなのかと思う程に
あげはと親しげにしていたので
親戚か何かなのかと思って居たほどだからな
その辺りも含めて…の
この店での結納を…と杏寿郎も
考えたことなのだろうが
「では、こちらの千城さんは
姉上の大切な場所なのですね」
杏寿郎の言葉に千寿郎がそう返して来て
「ああ、そうだな。だが、俺にとっても
今日、ここで結納をする事でここは
あげはにとっても、俺にとっても
新しい大切な思い出の場所になるからな!」
そう杏寿郎が千寿郎の言葉に
満面の笑みで返して来て
「結納には料亭である、大和を
押さえていると工藤から、
聞き及んでいたからな。
数日前になって、急に、場所を変更すると
工藤から変更の報せを受けた時は
正直俺も驚いたがな。
お前は何を考えてるのかと
自分の息子ながらに、疑りもしたが。
成程…。何ともお前らしい…、な。杏寿郎」
結納品の飾りつけだけに異様に
時間が掛かって居るのを気にしてか
仲居の女性が室内の様子を見に来て
「すいません、煉獄家の皆様。
ご準備の方は整っておいででしょうか?
この後は、仁科様の方も
飾りつけをなさいますので。
一旦、部屋から出て控え室の方へ…
ご移動して頂いてよろしいでしょうか?」
申し訳なさそうにそうこちらに
仲居の女性が説明をして来る