第63章 結納編 昼
「そろそろ、ご準備の方をお願い致します」
そう三好ではない別の仲居が声を
杏寿郎達に掛けに来て
「それでは、煉獄家の皆様。
お部屋の方へご案内の方をさせて頂きます」
一同に向けてそう声を掛けると
深く頭を下げた
結納の会場である 離れの奥の院に
仲居が案内をしてくれて
予め 手配をして
こちら方に届けて貰っていた
結納品を床の間の前に用意されていた棚に
飾り付けをする様にと促されて
「それでは、こちらの棚に煉獄家からの
結納品をお飾り頂いてよろしいでしょうか?」
略式結納の形式ではあるが
目録(もくろく)
長熨斗(ながのし)
金包(きんぽう)
勝男武士(かつおぶし)
寿留女(するめ)
子生婦(こんぶ)
友白髪(ともしらが)
末広(すえひろ
家内喜多留(やなぎだる)
の 9品の結納品を棚の上の白木の台に並べる
「なぁ、杏寿郎…聞いてもいいか?」
隣で一緒に結納品を飾り付けていた
槇寿郎が杏寿郎に声を掛けて来て
「はい、何でしょうか?父上」
「略式の結納なのに、五つ紋の紋付き袴に
9品目の結納品…か、
お前のしそうな事だな。杏寿郎」
略式の割には随分と改まった形式の結納
そんな印象を受ける
ちゃんとした形の結納をあげはと…と
杏寿郎なりに考えた結果なのかも知れないが
「正式結納にしてしまっては…、
それぞれの家を仲人が行き来して執り行うので。
こうして略式結納の様に、
両家が一同に顔を合わせて
食事を摂る事もないですから。
彼女に胡蝶の姉の振袖を胡蝶や、
あの蝶屋敷の…、あげはの家族の前で
あげはに着て欲しいと
そう俺としましては、考えておりましたが…。
俺も彼女の振袖姿が見たかっただけにあります」
あげはの振袖姿が見たかったと
そう杏寿郎が言って
その言葉の中に含まれている
純粋に見たいだけの意味とは違う
見たかっただけの意味に
ふぅっと槇寿郎が
小さくため息を漏らして
僅かに口の端を上げた