第62章 結納編 朝
「そうか?胡蝶が
そう言ってくれるなら安心だな。
胡蝶も、その振袖…、似合って居るぞ?
それが、あげはの
あの振袖と揃いの振袖なんだろう?」
そっとしのぶが自分の着ている振袖を
愛おしむ様にして撫でつけて
「ええ、そうです。これはカナエ姉さんが
生前に私の成人式にと誂えてくれた物です。
煉獄さん、ありがとうございます」
そう言ってしのぶが杏寿郎に礼を言うと
振袖を褒めたのに対しては
深すぎる位に深く長いお辞儀をして来て
そのしのぶの気持ちを
感じてしまわずに居られない
「煉獄さん、まだ早いのは承知で言うのですが。
あげは姉さんを、宜しくお願い致します」
ぽんっと杏寿郎がしのぶの目の前に移動して来て
その両肩に自分の手を添えると
「ああ、勿論だ。胡蝶。
俺があげはの事は
宜しくされよう!任せてくれ!」
「私は、煉獄さんで
良かったと思って居ますし。
煉獄さんとでなければ、
あげはさんはこうなってなかったとも
そう思ってるのですよ?煉獄さん」
そうしのぶが穏やかな表情で
杏寿郎にそう言って来て
「はははははは、そうか、…胡蝶。
君にそう言われてしまえば、俺は
己惚れてしまいそうだがな。
俺とあげははこうなるべく、
こうなっただけの事だ。
それ以上でも、それ以下でもないからな」
「それでも…ですよ、煉獄さん。
あげはさんが
背負っている物は大きすぎるし
重すぎますから。普通の殿方では
そんなあげはさんを
支える事なんて到底叶いません。
私は、煉獄さんだから
出来るのだと思っていますから」
「当のあげはは、
俺に、素直に支えられてくれないがな!
俺は俺の全てで彼女を支えるつもりでいる」
ーーー
ーー
ー
肌から整えて化粧と髪を結い直されて
「あげは様、お着換えを…」
「カナエ様がお待ちにありますので」
そうすみとなほが声を掛けて来て
あげはが自分の帯に手を掛けて
シュルシュルと帯を解いていくと
解いた帯をきよに託して
着ていた着物をアオイに託した