第62章 結納編 朝
宇髄がこちらに背中を向けて
俯くとそのままで答えた
「それは、俺も…そう思ってた。
一緒だっつーの、そうじゃね?
アイツがあげはの事を、
大事にしてたのは知ってる。
俺だって、アイツを…ッ、透真の奴を
取り戻せるなら取り戻してぇし?
そんなの、冨岡だってそう思ってただろうし?
一番、それを望んでいたのはアイツ自身じゃん?
誰かと付き合っても、浮かない顔してたしな。
忘れようもない相手じゃん?
俺だって女だったら忘れねぇよ。
あんな男に愛されちまったらなぁ、
仕方ねぇじゃん?」
「だから、私が言いたいのは
煉獄さんは凄いですって事ですよ」
そう言ってくすくすくすとしのぶが笑って
その顔を見て 宇髄も笑みを浮かべた
虹丸が手紙を持って戻って来るのが見えて
「虹丸!冨岡のやつは見つかったか?」
『水柱遅クナル~ゥ』
虹丸の足に括り付けられている手紙を取ると
その内容に目を通した
「先日の豪雨での土砂崩れで
道が塞がってて迂回してるらしいな。
遅れるとは思うが時間通りに始めてくれだとよ」
「宇髄!胡蝶!ここに居たのか探したぞ?
そろそろ、離れに移動しよう。
俺もこの通りだし、
あげはの方も準備が整ったからな!」
そうこちらに五つ紋の紋付き袴姿の
杏寿郎が廊下から声を掛けて来て
そのビシッと固められた髪の毛に
2人の視線が集中したのは言うまでもなく
「れっ、煉獄さん…その髪…ッ」
「ぶはははははっ、まるで別人みたいじゃん。
あの、3人が頑張ったんだな、その頭」
「むっ、笑う事は無いだろう?宇髄。
そんなにおかしいか?」
びっしりと固めて整えた髪を
杏寿郎が自分の指先で弄る
「いーや、派手に男前じゃん。格好いいぜ」
「ええ。見慣れない感じがするので、
違和感を感じてしまいましたが
とても、素敵です、煉獄さん。
袴姿も、新鮮ですし。お似合いですよ」