第62章 結納編 朝
「さあ、アンタはここだよ?
あげはちゃん。可愛い髪結いさん達が、
アンタが来るのをずっと待ってたからね。
私は、用意が済んだ頃に来るさ。
さ、入った入った」
ある一室の前で三好が
あげはの肩を掴んでいた
手を解放して来ると
その和室には自分だけで
入る様にと促して来る
可愛い髪結いさん達…?
その疑問は襖を開いたらすぐに理解が出来て
ここに居るはずがない
本来なら蝶屋敷に居るはずの
すみ きよ なほの3人娘と
アオイの姿があったからだ
今日の結納にはしのぶと
カナヲが出席するのだから
ここにこの4人が居るとなれば
あげはは落ち着いて居られるはずも無くて
「アオイっ、それに、3人も?
どうして?ここに?
嬉しい、嬉しいけど。今は?
蝶屋敷はどうなってるの?」
「あげは様は、心配性なのであります。
しのぶ様が手配して下さって、隠の方が
皆さんを看て下さっていますので」
「はい、そう言う事なのです。
私達がどうしてもとお願いしたのです。
あげはさんの、カナエ様のお振袖姿を
どうしても、見たくてッ」
「衣桁かけに一旦お預かり致します、
その間に、お化粧を整えましょう」
アオイとすみがこちらに手を伸ばして来るので
あげはが手に持っていたたとう紙に包まれた
カナエの振袖を2人の手に託した
2人が丁寧にたとう紙を開いて
その中から姿を現したカナエの振袖を
衣桁かけに一旦移すと
「少しでも吊るしておきましょう。
お支度、整えさせて頂きます」
そうテキパキと置かれている
三面鏡の前にアオイが色々と
準備をして用意して行く
すみは先ほどの衣桁かけに掛けた
振袖の皺を丁寧に伸ばして
その形を整えて行って来て
「結納までには時間がありますから、
これ、しのぶ様特製のパックです」
漢方薬が入ってるのか
生薬の香りのする黄色いパックを
きよとなほがこちらに見せて来て