第60章 気遣いと気遣い 後編
邪念を払うんだった…な
気を引き締めて当たらねば
パラパラと杏寿郎が
房中術の訳本を流し読みして
体交術についての
欲しい情報のある場所を探すと
「より、お互いの精神的な結びつきを
強固な物にするのに、
お揃いの形の物を身に付けるといいとあるな」
「お揃いの物…にありますか…?
しかしここには何も…」
同じ形の装飾品と言う事だろうか?
髪紐とかなら身に付けられるかも知れないけど
生憎に 私にはこの蝶屋敷の家族の証があるし
二つある…けど
私と杏寿郎で半分に??
そう思わず 自分と揃いの蝶の髪飾りを
身に着けている杏寿郎の姿を想像してしまっていた
指輪とかネックレスとかを今すぐには
用意するのは難しいだろうし
お揃いの形…
「ああ、そうだ。あげは。
今すぐに用意出来る物があるぞ?」
そう 杏寿郎が言って
自分の右の鎖骨の下の辺りを指で
トントンと合図して来て
その場所から指を離すと
向かい合って正座をしている あげはの
左の鎖骨の下の 蝶の跡の上をトンっと
指の先で叩いて来て
「あげは。俺のここにも、
君の蝶と揃いの蝶をくれないか?」
多分だけど…
そのお互いの揃いの装飾品は
お互いの気の交わる
媒介になる場所になるのだろう
「確かに、それならすぐに
用意する事も可能にありますね」
「試してみる、価値はあると思わないか?」
「では、杏寿郎…、失礼をさせて頂きますね」
跡を付ける部分を露出させる為に
杏寿郎の寝巻の合わせをグッと開くと
寝巻の下から 彼の鎖骨が現れて
右側の胸の上の辺りが 露出される様にすると
「ああ、そうだ、跡を残す時は
濡らすと残りやすいらしいぞ?
丁度いい、物があるだろう?」
蜂蜜…を 蝶の跡に塗り付けられた事を思い出して
同じ事をして欲しいと言う
意味なのかも知れないけど
蜂蜜の入った皿を隣に
取りに行って戻って来ると