第60章 気遣いと気遣い 後編
テカテカとした蜂蜜の光沢が
そのあげはの素の唇の色を
際立たせて何とも言えず
艶めかしいと感じさせてくる
ふわっと艶を放ち輝く唇から
甘い甘い蜂蜜の香りが立って来て
杏寿郎の鼻腔を刺激して来る
まるで その艶めきが誘っているかの様だ
「吸い寄せられてしまいそうだがな…」
「ですから、杏寿郎。
お顔が近くありますのでっ、
私は、まだ、
支度を整えている途中にありますので」
グイっとあげはが手で
杏寿郎の顔の向きを変えて来て
その手の手首を掴まれて
小皿に乗っている蜂蜜の水溜まりに
ちょんちょんと指先を浸けられてしまって
そのまま 小皿から手を持ち上げられると
テラテラと 自分の中指の先が
蜂蜜が付いて 輝きを放っていて
私の指に絡んでいる蜂蜜を
杏寿郎が自分の唇に塗り広げて行く
塗り終わったのに
また 中指を皿の蜂蜜に浸けられて
まだ塗るのかと
思いながら
その 甘い蜜の行方を
あげはが見守っていると
自分の中指に杏寿郎の唇が触れるのが分かって
もう 垂れて来るんじゃないかって
そう思って見て居ると
「落としてしまうのがダメなら、
俺の唇にも蜂蜜が付いてるならいいんだろう?」
そう杏寿郎が言って
二ッと笑って見せて来るから
そう言う事かと 理解してしまった
私が唇を潤すのに
乗せた蜂蜜を落とすなと言ったから
口付ける為に自分の唇にも塗ったのか
それも滴る手前まで たっぷりと
その後の行動なんて
想像するまでもなくて
彼の唇に乗せてある
滴りそうな程の甘い甘い蜂蜜を
杏寿郎が唇で私の唇に塗り込む様にして
口付けて来るから
匂いから 味がしてしまいそうな程に
濃密な蜂蜜の香りが
鼻腔に溜まって香りが抜けて行かないで
その空間に留まるのを感じる
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※甘い蜜の行方が好きすぎて
本文に無意識に入れ込んでしまっていました。
甘い蜜の行方のまる様には
このまま使用しても構わないと言うご許可と、
こちらの方にお名前を出す許可を得ております。