第60章 気遣いと気遣い 後編
「あげは様、私の
こちらの手にもいいですか?」
そう一条がパックをしていない方の手を
差し出して来たのでそちらの手にも
同じ様でハケで あげはがそれを塗る
その様子を見ながら清水が
「あの、これは一体…」
「手作りの蜂蜜パックです。
今日の美顔術師の方が、蜂蜜の美容効果を
とても仰っておられたので。作ってみたんです」
「私のこちら側の手を見て下さい、清水さん」
既にパックを終えた方の手を
一条が興奮気味に清水に見せて来て
その様子をニコニコと
あげはが穏やかな笑顔で見ていて
「それで、これをお二人にも
とても素晴らしかったので使って頂きたくて、
と言っても私はお台所をお借りしただけなのですが」
「信じられませんよね?でも
あげは様のお肌を見てたら
羨ましくなってしまって。
そんなお話をしていたら、あげは様が
作って下さると仰られたので。清水さん
もういい頃にあります、洗い流して見て下さい」
半信半疑の清水が一条の
いつになくテンションの高い様子を見て
不審に思いながらも
このベタベタなままでも居られないので
手に付いた物を洗い流すと
しばらく 無言のままで
洗い流した 白くピカピカになった
自分の手の甲を見ていて
「ね?ね?凄くありませんか?清水さん」
「きゃあああああっ!
これっ、どうなってるのですか?」
バタバタと足音が3つ
台所の悲鳴を聞きつけて向かって来て
勢い良く戸が開いて
「どうした?清水、一条何事だ?
ムカデでも出たのか?」
「清水さん、一条さんに、姉上?まで。
皆さんこの様な時間に台所で何を?」
台の上の材料を見て杏寿郎が
顔を顰める
「何だ?皆で菓子でも作って居たのか?」
「はいはい、お台所は男子禁制にあります。
殿方は御下がりになって下さいませ。
ムカデもゴキブリもおりませんのでご安心を」
そう言ってあげはが様子を見に来た
槇寿郎 杏寿郎 千寿郎の3人を纏めて
背中を押して部屋から出すと
台所から遠ざけた