第59章 気遣いと気遣い 前編
「全く、要らぬ口を…お前は」
どうにも 居心地の悪そうにしながら
槇寿郎があげはの方を睨むが
あげははその視線を気にする様子もなく
千寿郎と一緒にニコニコと
満面の笑みを浮かべて
槇寿郎の方を見ていて
「千寿郎と、あげはも
似た者同士に見えるがな?」
そう杏寿郎が言って来て
あげはと千寿郎が お互いの顔を
向き合わせて 見合わせると
何でだろうと言いたげに
お互いの首を傾げて
さぁと漏らした
「似ておりませんよ、杏寿郎さん」
「そうですよ、兄上」
俺の目から見れば
さっきの行動も今の表情も
似てるがな…とは 言わないでおこう
その3人のやり取りを
槇寿郎は眺めながら
グイっと自分のお猪口を傾けた
杏寿郎が居て 千寿郎が居て
あげはが居て
俺が居て
杏寿郎とあげはの間に子供の
一人や二人…でも居れば
この家も 随分と賑やかになりそうだな
「なぁ、杏寿郎」
「何でしょうか?」
「お前は、あげはとの間に
子供は何人持ちたいと考えているんだ?」
ストレート過ぎる
槇寿郎の質問に
ブッとあげはが口に含んでいた
冷酒を吹き出してしまって
「あ、姉上?大丈夫ですか?」
「ごっ、ごめん…、千寿郎君…ッ」
あげはの背中を千寿郎は擦りながら
自分の兄にも こんな事をしたよなと
それを思い返していて
兄上と姉上も似てるのではと
そんな事を考えていた
しんっと静まり返って
杏寿郎の言葉を3人で待っていると
「5人ほどは、と考えております。
子供は多い方がいい、
俺としましては、そう思っておりますが」
5人…?
5人!!?
いや 別に 7人や8人兄弟なんて
ざらにいるから
珍しい子供の数でも何でもないが
年子で全員 産んだとしても
単純に考えても
5年…掛かる 訳で…
「おい、杏寿郎、
あげはが固まってるが。
お前は、あげはにそれを伝えたのか?」
そのあげはの様子を見た
槇寿郎が杏寿郎に声を掛ける