第59章 気遣いと気遣い 前編
杏寿郎の言葉にぐしゃっと
槇寿郎が自分の髪を乱す様に掻くと
「俺もまだまだ、…未熟だな」
一瞬 にでも 恐れてしまったんだ
杏寿郎もあげはも 失うんではないかと
それを どこかに考えてしまって
それを 恐れてしまっていた
そして それを目の前の息子に
気取られてしまう…とはな
炎柱として務めて来た
煉獄家の当主が情けない話だ
通りで息子も
知らぬ間に 随分と…
男としても 人としても
成長していたのだと 感じずに居られない
「杏寿郎。そう、急くな」
「え?は、…確かに俺は
せっかちな性分ではありますが…」
槇寿郎が静かに杏寿郎を見つめて来て
その瞳が 全てを物語っていた
「アイツは異常だ。俺より歳は
随分と下だったが、
妙に落ち着き払っていた。
まるで世界なんて、
何もかも知り尽くしてる様な。
仙人みてぇな奴だ。俺ですら
アイツには敵わない、追いつけないと
そう感じて居たもんだ…」
鬼殺隊 水柱 三上透真
「父上、俺は彼に……」
「杏寿郎、だからお前は
急ぎすぎなんだ」
言葉を紡ぎきる前に
槇寿郎の言葉に遮られてしまって
「槇寿郎様、杏寿郎さん。
こちら、置かせて頂きますね」
そう言って あげはが
ぬるく付けた徳利を置いた
お盆を2人の間に置いて
頭を下げて その場から下がろうとする
「足りんな」
そう槇寿郎が漏らす様に言って
「え?あ、でしたらもっと
お付けして来ましょうか?」
スッと後ろに気配を感じて
あげはがそちらを向くと
そこには望月の姿があって
『主様がそう仰ると思っておりましたので、
誠に勝手ながら、こちらの方
ご用意をさせて頂いております』
そう望月が トレーを片手に持っていて
あげはが用意していたお盆隣に
持っていたトレーを置いた
その望月も持っていた
トレーの上には
チョコレートと
冷酒を用意してあるのが見える
冷酒?