第59章 気遣いと気遣い 前編
気のせいか…?
あげはの横顔が
心なしか曇って見えるのは
「あげは、どうかしたのか?」
自分の方に気を引こうと
つんっと自分の手の甲で
あげはの身体に少し触れると
驚かせてしまったらしく
ビクッと身体を震わせて反応したので
「いいっ、いえっ、
杏寿郎。何でもございませんっ」
そうだ 蜂蜜…身近過ぎて忘れてたけど
蜂蜜にも そう言う効果があるんだ…った
通りで さっきの口付けが
官能的に感じてしまって仕方がなかったのも
杏寿郎が 私の身体に沁みついて居た
蜂蜜の香りを嗅ぎたがったのも
その所為…なのかも知れない
「折角、蜂蜜が沢山ございますし。
あげは様のご入浴前に
蜂蜜…風呂に致しましょうね。
蜂蜜風呂は、エジプトの
絶世の美女との誉れも高い。
クレオパトラも美容の為に、
蜂蜜風呂に好んで
入浴されていたとか…。
先程の美顔術師の方より、
夜のご入浴に使うようにと
お預かりしている物がありますので」
また 入浴の際に用意を致しますと
そう望月が言って来て
施術の時の肌を当日まで保てるように
アフターケアのサービスまであるとは
とキメの細かい サービスに感心しつつも
「あの、望月さん」
「はい、如何なさりましたでしょうか?」
「その、この辺りにしか出張は
流石にしては頂けませんよね?
自分の肌が自分の肌で無い様な
そんなしっとりとして、透明感のある
ハリのある肌になれるんだったら…。
結納の時だけでなくて、結婚式の前にも
施術を受けたいな…と思いまして」
「ああ、それにあればご安心を。
蜂蜜の美顔術を施術する、美顔術師は
東京のあちこちに支店がありますので。
炎屋敷への出張が可能な支店があるかと、
お家で出来る自己施術についても
お調べ致しておきましょう」
あげはの質問に対して
笑顔を崩す事なく望月が返して来て
「す、すいません…、
ありがとうございます…ッ」