第59章 気遣いと気遣い 前編
「甘い物…なんだな。
君のここの蝶まで、蜂蜜の所為で
すっかり甘くなってしまってる様だな。
もっと、他も甘くなってしまいたいか?」
「んっ、杏寿郎、やっ…んっ、
い、今は…なりませんっと、
先程も、私は申し上げました、ん、のでッ」
「なら、後で…だな?あげは。
俺と君にしか知れぬ蝶を…君に残そう。
それに、俺はまだ君からの
印を貰ってないしな。
約束だったろう?俺の背中に
君の跡を残してくれると…」
杏寿郎の問いかけに
ブンブンとあげはが首を横に振って
その両方を否定して来る
「杏寿郎。もう、
これ以上は…蝶は困ります…ッ、
何時、どこで肌を
晒す事になるか…分かりませんし」
「俺以外に肌を許すと?
その可能性があるとでも
言いたいのか?君は」
「違いますッ!!
そう言った意味ではなく、
その、こんな風に
肌の透明感が増すのなら、
結婚式の前の日にも…、
したいなと…思いまして。
肌の露出のある、
ドレスも着ますし、その…ッ」
これ以上に 身体のあちこちに
杏寿郎に蝶を残されては 困る
「だが、まだ先の話だろう?
それも。なら、俺の背中に
跡を残せない理由の方も聞いて置くか?
まぁ、それも思えない程に
俺の事で君を乱せばいいだけだろう?」
理性がそれを止める事が出来ない程に
そうしてしまいたいと言われれば
「ここで…、我を失う程にまで
乱れます…訳には…、行きません…のでッ」
そう言葉を詰まらせながらに
あげはが杏寿郎の言葉に答えを返して来て
「君は頑なだな…、
相変わらずではあるが。
そうだと、言い張るのであれば、
その虚勢も、理性もままならぬ程に
乱してしまいたくもなるが…いいのか?」
ギュッとあげはが杏寿郎の
着物を掴んで来て
潤んだ瞳を向けると
「あの、杏寿郎…、
ここではそれは…
お許しをして頂きたく、
あるのですが…ッ、その…」