第58章 虎と虎
自分の煉獄があの時
あげはの鏡に飲まれるのが見えて
本来の鏡面なら 身体の前に現れるのは
透ける 一枚の 鏡の壁のはず
だが あの時の あげはを守っていた
あの鏡の壁
俺と父上の煉獄を受けるべく
正面ではなく 左右に
それも 一枚ではなくて 三重になっていた
パンパンと自分の袴に付いた
砂をあげはが手で払いながら
ゆっくりとあげはが立ち上がると
「ええ、先ほどのは、
普通の鏡面ではありません。
杏寿郎のお言葉の通り、鏡の細分化と
複数の枚数の同時所持が、
出来る今だからこそに出来た物にあります。
鏡の呼吸 壱ノ型 改 対鏡面 三重。
(ついきょうめん みえ)
左右に鏡面を三重に発生させる型にあります。
本来の鏡面の強度では、鏡が砕けますから」
「あげは、なら、その鏡…
今の君なら、何枚重ねられ得る?
三重が、限界でもあるまい?」
杏寿郎は 気がついて居る
私が 鏡連で
小さな鏡を 36枚 重ねてるのを見てるから
「杏寿郎、枚数だけが全てにありません。
鏡の枚数を幾重に重ねるよりも
より、有用になる方法も、
この呼吸にはありそうですので」
「派生の呼吸なんざ、後追いの後追いだとばかりに
今まで思って居たが…」
そう あげはの呼吸について
槇寿郎が腕組みをしながら話始めて
「前にアイツが、鏡の呼吸の事を
無限の呼吸だと言っていたのを思い出した」
アイツと槇寿郎が言ったのは
恐らくに ”彼”の事で
「透真さんが、にありますか?槇寿郎様。
恐らくにでありますが、鏡の呼吸は
合わせ鏡にする事により
真価を発揮する呼吸なのかと。
鏡を複数枚所持する事が、この呼吸の
力の恩恵を受けるのに必須であったのでしょうね」