第8章 療養編 蝶屋敷にて
が しかし当の本人は
また眠ってしまったようで
私はこのホールドから逃れられないでいた
そんな事をしているうちに
朝食を配膳に来たアオイが
その様子を見て お邪魔しましたと
ドアを閉めようとしたので
呼び止めて助けて貰ったが
まだ眠っていたので
試しに普通の声で「朝ごはんですよ」と
呼びかけたら
すごく目覚めが良く起きてくれた
「君のだけ、特別仕様な様にあるが?」
杏寿郎の朝食は干物にだし巻き卵
お味噌汁に白ごはんに
五目豆だったのに対して
あげはの朝食はアオイちゃんが
気を利かせてくれたのだろう
ヒタヒタの柔らかめにしてある
フレンチトーストに
ヨーグルトにプレーンオムレツ
味噌汁と同じ具材のコンソメスープだった
飲み物はホットミルクの様だし
「アオイちゃん、ありがとう〜。美味しそう」
一晩休んで元気が出たのか
彼女の食欲も戻っていたようで
朝ご飯を完食して
昨日のバナナも食べていたので安心した
「今日は、化粧をしているのだな」
「まぁ、もしかすると、お見舞いに誰か
来てくれるかもしれませんから」
「見舞いか、こっちから行くか?」
「炭治郎君達には、随分と心配をかけて
しまいましたし、顔を見たらお互いに
安心できますもんね。私もそうしたいと
思っていましたので」
杏寿郎が何やら思い返していたの様に
余韻に浸って居るように見えて
「どうかされましたか?」
とあげはが声をかけた
「いや、…君に声をかけられて目を覚ます前に…
いい夢を…見ていたな…と思ってな」
杏寿郎の言葉にあげはが
先程の事を思い出して
視線を逸らせて心なしか頬を
染めていた様に見えた
「いい夢…が、見れたんだったら、
良かったですね」
「聞きたいか?どんな夢だったか」
「え?覚えてたんですか?寝てたんじゃ…」
思わず声を大きくしてしまって ハッとした
「夢は寝てる時に見る物だと思っていたが、
違っていたか?」
そう言ってふわりと穏やかな微笑を浮かべる
満面の笑みじゃない顔も…するんだな
「君の事を抱きしめて…眠る夢だったぞ」
徐に立ち上がるとあげはのすぐ前に来て
「君さえ、許してくれたら…
すぐにでも現実にできそうな夢だったがな」