第57章 焦れる焦燥 ※Rー18
その 素晴らしい程の
彼の豪快な食べっぷりに
どうにも 彼を
男性として異性としての
垣根を越えて
雄として意識してしまっている
自分が 奥底にあるのは確かで
子作りは しばらく控える様にと
念を押されて置きながらに
自分も自分で… 自分の本能的な部分で
彼を 欲してしまっているのが分かる
生命の危機を感じると
種を残したいと本能が働くから
自分の子孫を残したいと感じるのは
人も須らくに 動物なのだと
感じてしまってやまないのだが
「あげは。今は食べるといい。
腹が減っては戦は出来ん。
食べる事も、英気を養うからな!」
私の箸が止まっていたので
杏寿郎がそう言って来て
「健全な肉体にこそ、
健全な精神が宿るのだからな!
それは君も良く知っているだろう?
自分が心身ともに健康にある事が、
何よりの大前提だ!」
「え、ええ。そうですね…、頂きます」
じっと杏寿郎があげはの顔を見て来て
小さく首を傾げている
「もしや、既に…?」
「いえ、その心配はございませんが…。
それに、今したからと、今できる様な
物でもありませんよ?杏寿郎。
私が、何らかの形で、自覚するにしても
今の今では自覚する術はありませんから。
それに、今はまだそうなり得ませんので…」
追加で注文した大盛の天ぷらそばも
まるで手品か何かの様にして
杏寿郎の胃袋に吸い込まれて行って
コトン…と 空になった器を
杏寿郎が机の上に置くと
使っていた箸を揃えて置いて
姿勢を正して 手を合わせると
「ご馳走様でした」
「あ、はい。ご馳走様でした」
思わず お粗末様でしたと
勢いで言いたくなったが
私が用意した物じゃないから
それを言うのはおかしいし
「どうした?あげは。
俺の顔に何かついて居るか?」
「いえ、杏寿郎は
ご両親に愛されて育っておいで
だったのだろうと、感じておりました」
私のその言葉を聞いて
杏寿郎が不思議そうな顔をしていたので
何でもありませんと返事を返した
でも いつか… 自分も