第57章 焦れる焦燥 ※Rー18
「髪結いは複数の見世に、
堂々と出入りが出来ますから。
ああ、その時は顔に大きな
醜い傷跡を化粧で作りましたので。
遊女として潜入を
していた訳ではありませんし。
遊女としての潜入は身動きが取れませんから」
じとっとした視線を杏寿郎が
こちらに向けていて
説明が足りないとでも言いたそうな
そんな顔をしていたので
「その時に、太鼓新造として
見世に潜入していた隊士からも
色々と聞きましたし、髪結いとして
贔屓にして貰っていた遊女からも
色々なお話は、お伺いしましたが…」
「彼は?反対しなかったのか?」
「彼にありますか?
彼は…あの時は、苦笑いしてましたが。
小さな見世の並ぶ辺りの、
ボロ家で、彼とは、
しながい髪結いの夫婦をしてましたので。
吉原と言っても、一つの町ですから。
見世ばかりでも、ありませんし。
揚屋や茶屋もありますし…銭湯もありますから。
それに、本屋や、質屋もありますし。
まぁ、医者も当然おりますから。
そちらに看護婦として
お世話になっても良かったのかもですが」
そう言いながら あげはが苦笑いして
「過酷な就労環境と、低栄養で
体調を崩す遊女もありましょうが。
恐らくにあそこでの仕事は、梅毒の末期と、
堕胎処置が主な仕事になりましょうが」
吉原は偽りの愛と性を売る夜の街
着飾った華々しい 遊女達は
針のむしろの上の 籠の鳥だ
「君を夜の蝶にするのを、防いでくれた
君のお父上には感謝するより、他にないな」
ゴロンと杏寿郎が
うつ伏せになっていた身体を
仰向けになる様にして戻すと
おいでと杏寿郎があげはに
自分の身体の上に身を預ける様に
促して来て
促されるままに 杏寿郎の身体に
自分の身体を預けると
そのままよしよしと頭を撫でられてしまう
「あげは。君が、
俺の君なのだと…、
もっと感じてもいいだろうか?」
このまま もう一度 身体を重ねたいと
そう杏寿郎が訴え掛けて来て