第57章 焦れる焦燥 ※Rー18
「なら、杏寿郎の事は
私の好きにしてもいいと?」
「無論、言うまでにも無いがな。
俺を、君の好きにしてくれ。あげは」
そう言って来る口調からは
何とも言えない様な
そんな色香が滲んでいて
その 好きにしてもいいの中に
性的な意味合いもあるのだと
匂わせて来る
あっちとあげはが布団を指差して
杏寿郎に移動するように促して来る
そこと布団を指差して
布団の上に向かい合って座る
「傷跡を、もっと良く見せて頂いても?」
「あの鬼の残した傷跡なら、
俺も、気に食わないんだが?」
「横になって、頂いても?杏寿郎」
あげはに促されるままに
杏寿郎が布団の上にうつ伏せになった
「しのぶちゃんが、
特製の傷跡を目立たなくする
軟膏をくれていますから、
完璧に無くなりはしませんが、
目立ちにくくはなりますよ?」
チュウッとその傷跡に
あげはが口付けると
その傷跡の形をなぞる様にして
自分の舌を這わせて行く
「あの上弦の鬼と…、
再び相まみえる事はあるのでしょうか?」
「可能性としては、有り得るだろうな。
今まで姿をくらませていた、
他の上弦の鬼も、
姿を現して来るかも知れん。
無惨に近づくと言う事は、
それより先に、
上弦に近づくと言う事だからな。
それに、現に現れたんだ、今までは
あちらから姿を見せるなど、無かった事」
「吉原に数百年と巣くう上弦の鬼も…?
私も以前、
吉原の鬼を探すのに柱をしていた時に
ひと月ほど…吉原に
潜入をした事がありましたが…」
ピクッと杏寿郎があげはの言葉に
反応を示して
腕を付いて上半身を起こすと
顔をこちらにその体勢のまま
向き直るとこちらに
鋭い視線を向けて来る
「吉原に、潜入?君がか?」
「杏寿郎は何か、勘違いを
なさっておいでにありますが。
私が、吉原に潜入したのは
遊女としてではなくて、
髪結いとしてにありますので」