第56章 蝶と蜘蛛と
「あ、あの…、
杏寿郎?如何なさいましたか?」
墓石の方へ あげは見せる様に
あげはの両肩に自分の手を添えると
「母上、こちらの方は、この前に
父上と千寿郎と来た時も、
一緒ではあったのですが。
杏寿郎は…こちらの
仁科 あげはさんと
結婚をする事を、
母上にご報告に上がりました」
そう紹介されてしまったので
あげはが居住まいを正すと
「瑠火様、改めまして、
仁科あげはと申します。
杏寿郎さんと、一緒に夫婦として
これからも、支え合って鬼殺隊の
使命を果たして行きたいと
考えております。
槇寿郎様から、
この度、瑠火様の黒留袖を
預からせて頂く事になりました。
至らぬが多い事かと思いますが、
杏寿郎さんの妻として、これからも
精進を積み重ねて行きたく…」
そう自分の想いを言葉にしていると
トンッ背中を叩かれて
隣の杏寿郎の方をに視線を向ける
「何もそこまで君が気に負う、
必要はないぞ?あげは。
俺達は、夫婦になるんだ。君が
ひとりで、妻になるんじゃない。
君は君のままでいい。君が
側に居てくれれば、それでいいんだ」
杏寿郎が何かを思い出して
うんと頷くと
あげはに向けていた視線を
目の前の瑠火の墓へと向ける
「母上…、あの時の母上の言葉。
杏寿郎は忘れておりません。
私は私として、煉獄杏寿郎として。
炎柱としてではなく、
果たしたいと思う事をあげはさんと
果たしたいと考えております。
彼女を、…あげはさんを俺の全てで
守りたいとそう考えております!!」
ぐっと自分の拳を握りしめながら
そう墓前に誓いを立てると言うには
余りにも力強い口調で言って
その口調からは
強い 誓いと意思を感じ取るまでもなく
思わず 気迫に圧倒されてしまった
「ごっ、ご安心下さいませ、瑠火様。
貴方様の大切なご子息は、私が、
守ります!支えて、支え抜くと
お誓い申し上げます…、必ずに」