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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第56章 蝶と蜘蛛と



「あげは、水を流すから
濡れない様に、離れてくれるか?」

「ええ。すいません、お願いします」


あげはが磨いた墓石に
杏寿郎が柄杓で掬った水を掛ける

「杏寿郎、お済になられましたら
柄杓、お貸し頂いても?」

そう あげはがこちらに
柄杓を貸して欲しそうに
手を出して来たので


墓石に水を掛け終えると

その手に 自分の手にあった

柄杓を握らせた


「ありがとうございます、杏寿郎」


桶から 水を掬い上げると
花立を軽くゆすいで
あげはが中に水を満たす


「杏寿郎、お花、こちらにどうぞ」

「ああ。すまない」


白い菊をベースに花屋で
墓花にと頼んで纏めて貰った
スターチスやカーネーションとユリに
胡蝶蘭が纏めてある物を

花立に挿して供えた


柄杓を持っていたあげはが
水鉢を新しい水で満たして居ると


杏寿郎がしゃがみ込んで
下にある香炉の戸を開いてくれていて

「杏寿郎、終わってからに
してくださればいいものを…。
今はまだ、水を…使っておりますのに」


水を使っているからと不満そうに
あげはが訴えかけて来て
杏寿郎の行動が せっかちだと
指摘されてしまった


ザワザワと風が墓地を吹き抜けて
周囲の木々が揺れて 音を立てる

葉と葉が擦れる音が
くすくすと笑う 
笑い声の様にも聞こえる


「あげは、
この線香は?バラの香りなのか?」


「ええ、杏寿郎から頂いたバラを
匂い袋にするのに、一緒にこの線香を
使用したのですが、その残りです。
いつか、瑠火様の墓前にお供えできたらと
考えて残していた物なので、こんなに
早く、その日が来るとは予想外でしたが」

手にしていた線香を香炉に供えて
2人で並んで
手を合わせて目を閉じる

スッと閉じていた目を開くと


杏寿郎が 
あげはの背中に腕を回して来て
グイっと身体を引き寄せられる

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